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全国の中年の心を未だ躍らせる永遠のサッカー小僧、キング・カズ〜三浦知良(サッカー選手)

思えば日本のサッカーは、三浦の存在を抜きにしては語れない。

15歳で単身ブラジルに渡り、18歳で名門サントスFCとプロ契約を結んだ三浦。
1990年に帰国してからは読売サッカークラブ(のちのヴェルディ川崎、東京ヴェルディ)に所属。1993年のJリーグ発足時には第一回MVPに選出されるなど、目覚ましい活躍を見せた。特にゴールを決めた際に披露される「カズダンス」は、90年代の小中学生がこぞってマネをしたものである。
その後、日本人初となるイタリア・セリエAでのプレーなども経て、2005年からは横浜FC所属となった。その活躍や受賞歴は、到底ここには書き切れるものではない。

今年は、Jリーグ発足から27年となる。
CMでラモス瑠偉が「日本人ならお茶漬けやろがー!」と叫び、中山雅史が「ゴンゴンチャチャチャ、ゴンチャチャチャ」と「タンスにゴン」の宣伝をしていたあの時から、もう四半世紀以上が経過しているのである。
一説には、日本のサッカー選手の平均引退年齢は26歳とも言われている。下手すると、Jリーグ発足時に生まれた選手が引退をするという時代に入っているわけだ。そのような中で、三浦はいまだ現役を続けている。Jリーグ発足時からプレーを続ける唯一の現役選手である。

我々中年の心をまで躍らせるカズダンスよ、再び

他の競技に比べても運動量が多いサッカーで、なぜ50歳を越えても現役でい続けられるのだろうか。

今年1月、TV番組(TBS系「スーパーサッカー」)の“ミスターレッズ”福田正博との対談の中で、三浦は「引退する時はもう体が動かないもん、それぐらいだったら(現役を)やる」と語っていた。
まだ体が動くという自信があるからこその現役続行なのであろう。
さらに自らを「サッカー小僧」と呼び、「サッカーが上手くなりたい、今でも上手くなれると思ってやっている」と語った。
体力だけではなく、あくなき向上心、サッカーを純粋に好きだと思う子どものような気持ちが、三浦の原動力なのだろう。何かにつけて「もうトシだから」と色々なことを断念してきたわが身を振り返って恥ずかしくなった。

今年、横浜FCは13年ぶりにJ1に復帰した。
三浦が出場すれば、2012年に中山雅史(当時・コンサドーレ札幌)が記録した45歳2ヶ月1日の最年長出場記録を大きく上回ることになる。

Jリーグは、新型コロナウイルス感染拡大による4か月の中断を経て、今月7月4日からリーグ戦を再開した。
三浦はその再開初戦からベンチ外が続いているが、もし再び三浦のゴールを見ることができたなら、全国の中年男女の奥底に潜む「少年少女の心」が、一斉にカズダンスを踊り始めることだろう。

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新刊紹介

オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

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