よみタイ

ブンゴウ泣きたい夜しかない。~文豪たちのなんだかおかしい人生劇場

【文豪と泥酔】酔っぱらった勢いで太宰とガス自殺をしようとしたあげく、その太宰を見捨ててトンズラした檀一雄

いざ死に直面したら怖くなってしまった檀一雄が逃げたのは

どれほど時間が経ったか、数十分か数時間か……猛然と目を覚ます檀。そしてガス管の口を開いたことを思い出します。太宰はまだ眠っているようだ。

「頭の芯が甘く麻痺しかかっている」ような感覚の中、布団から抜け出し、畳を這って、なんとかガス管を閉じ扉を開け放つ檀。そしてそのまま「ワア、ワア。ワア、ワア」と喚き、よろけながら外に走り出します。

「私はそのまま自転車をかって、玉の井の家に出掛けていった。通い馴れた女はいてくれた。その布団と肌にもぐりこんで、生涯味わったためしのないような安堵を感じた」という檀。
玉の井とは旧東京市向島区に存在した私娼街。死に直面し恐怖した檀は、アパートから飛び出してそのまま馴染みの娼館に飛び込んだというわけです。

ええ。太宰をほったらかしにして。

左から檀一雄と太宰治。温泉旅行に行くほど仲良しのふたりだったが……(画像提供/日本近代文学館)
左から檀一雄と太宰治。温泉旅行に行くほど仲良しのふたりだったが……(画像提供/日本近代文学館)

翌日、なんとか生きていた太宰に「ひどいね、君は。通いつめて、一晩だけ泊った芸者に逃げられたような気がしたよ」と耳元で囁かれる檀一雄なのでした。

ちなみに、太宰治と檀一雄がガス心中騒動を起こしたこのアパート、太宰の部屋でも檀の部屋でもありません。帰省中かなにかで留守にしている友人のアパートらしく「そこが何処のアパートだったか、今思いおこせない。」と檀は言います。

いくら酔っぱらっていたとはいえ、人の家に勝手に転がり込んで自殺騒動を起こす太宰と檀……絶対に友達になりたくないタイプですね。

1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

関連記事

新刊紹介

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

進士素丸

しんじ・すまる●1976年2月生まれ。ライター・文筆家。「文豪どうかしてる逸話集」(KADOKAWA)著者。文豪や歴史にまつわるツイートも話題に。
雑誌・ウェブ媒体などに寄稿しつつ、映像制作やデザインなども手掛ける。

Twitter●@shinjisumaru

週間ランキング 今読まれているホットな記事