2026.2.19
マッチングアプリで稼ぐ女子大生から学んだ資産形成のリアル【平成しくじり男 第7回】
「ね? 老後に困ることはないでしょ」
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20歳から24歳までの5年間、NISAで毎年360万円の満額投資をし続けた場合、その後の複利の力だけで60歳になったときの資産額がいくらになっているのかを、ChatGPTに聞いて計算結果を返してもらったときのスクショだった。仮に年利の平均が3%だった場合と、5%だった場合と、7%だった場合の3パターンの結果が表形式でまとめられていた。年利3%なら、60歳になったときの資産額は5000万ほど、年利5%なら1億、年利7%なら2億近くになるという結果だった。
「ね? 老後に困ることはないでしょ」
彼女のその言葉を聞いて、僕は急に恥ずかしい気持ちになった。これまで投資とは無縁な人生を送ってきたからだ。33歳で貯金額は数百万。今も生きていけているように未来も生きていけるだろうと漠然に思っていて、老後の資金について具体的なスケジュールは特に考えていなかった。そんな僕よりも、彼女のほうが遥かに未来の自分について考えていた。それにも関わらず、「就活しなくてもなんとかなるよ、僕もしていなかったし」などとアドバイスを口にしてしまっていた。年が上というだけで、彼女よりも自分のほうが未来についての知見があると思い込んでしまっていたが、見当違いも甚だしかった。こんなことになるなら、「カルビ8枚を一度に焼かないほうがいいよ」とアドバイスしたほうが遥かによかった。
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焼肉屋のお会計は1万5千円ほどだった。もちろん、僕が払った。
お会計のあいだ彼女は焼肉屋の前で待っていた。駅まで送ったほうがいいのかと思い、「駅まで送っていきましょうか?」と聞くと、「あっ、私コンビニ寄っていくから大丈夫です」と即答された。その慣れた言い方から、今すぐ一人で帰るための定型の断り文句なのだろうと思った。その場で解散することになった。
自宅に向かって歩きながら、正直バカバカしい気持ちになっていた。60歳になったときに少なくとも5000万、多くて2億の資産形成を進めている10個以上も年下の大学生に、焼肉を奢ったのだ。
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
これまで投資とは無縁な人生を送ってきた、と書いたが、意識的に無縁であることを望んだというニュアンスのほうが近かった。僕が大学生だった2010年代の前半も、投資をはじめたという同級生は近くにいた。しかし話を聞いてみると、絶対に儲かる有料の投資セミナーに勧誘してきたりして、投資というよりマルチ商法に片足を突っ込んでいるだけの人ばかりだった。だから投資をはじめたと言い始めたやつは、新興宗教の勧誘に引っかかったやつと同じくらい陰でバカにされる存在だった。投資というものは怪しいもので、無縁であるほうが安全であるとそのときに学習したのだ。それがいつの間にか、大学生がChatGPTを使って最適解を導きながら使える国の推奨制度にまでなっていた。
自宅に着いてすぐ、一目散にパソコンデスクの前に座った。久しぶりに食べたカルビの脂の重さを胃のあたりに感じながらSBI証券のサイトにアクセスし、証券口座開設の手続きを進めることにした。
(了)
次回連載第8回は3/19(木)公開予定です。
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