2019.5.22
動物の義肢装具の製作所を訪ねる。年間、約3000匹の犬猫を救う技術と熱意
坂上忍さんの愛犬の義肢を製作。使えるように練習も
今までに約2万点の義肢装具を手がけてきた島田さん。発展途上の分野に対して獣医師と飼い主の協力を得るために、丁寧な説明や要望の反映を心がけているそうです。
「症状や義肢装具の種類によっては、動物が違和感を覚えて嫌がることが多いのです。飼い主さんが不安を感じて外してしまうと症状の悪化につながるので、獣医師と共にしっかり説明します。『天才!志村どうぶつ園』で坂上忍さんの愛犬に義肢を製作した時も、慣れるまで練習が必要でした。でもそれを見て『虐待ではないか』と思う人もいるのです。人が義肢装具を使う練習をするのと同じなのだということを知ってほしいですね」
義肢装具がうまくいかないこともあります。ペットの中では猫の前足とウサギが難しいのだとか。
「猫は前足を使う動作が多いせいか、義肢への違和感をなかなかなくせないようです。ウサギは症状が安定しにくいため、装具ができるまでの1週間の間に症状が進行したり別の部位が悪くなったりしてうまくいきませんね。今は犬が大半ですが、需要があればいろいろな動物の義肢装具を研究したいと思っています」(島田さん)
今はまだ3Dプリンターより自分の手。将来は…?
人の義肢装具は3Dプリンターによる製作が進んでいます。動物の分野でも注目され始めましたが、実用にはまだ時間がかかるようです。
「3Dプリンターで何でもできるかのように思われがちですが、実際は手作業の義肢装具に比べて使える材質のレベルが低い。特にプラスチックは重くてよくないんですね。数千万円の3Dプリンターを使っても、まだ手にはかないません。でも同じ装具が2つ必要な場合、3Dプリンターでできたら効率がいいでしょう。いずれは活用してみたいですね。実は慶應義塾大学が主催する、犬の義足を3Dプリンターで作るプロジェクトに参加しています。いずれは義肢装具そのものができる時代になるかもしれませんね」(島田さん)
「ペットが歩けるようになったり症状が緩和したりして、飼い主と獣医師に喜ばれるのが一番のやりがいです」(島田さん)
島田さんが製作した動物の義肢装具を見て、各地の大学や製作所で研究が始まっています。人もペットも高齢化社会でQOLが課題になる現在、義肢装具を必要とする動物はこれからも増えていくことでしょう。
<取材協力>
東洋装具医療器具製作所
HP:http://www.toyosogu.com