2021.9.22
牛乳などを「奥から取る」人は88%!「日付が新しい方が得」と考える人が見落としがちな「処理コスト」の真実
日本では1年間に約600万トンもの食品ロスがあり、実は、そのうちの半数近くにあたる276万トンは、一般家庭から捨てられているのが現状です(2018年、農林水産省・環境省調べ)。
各家庭や個人で無理なくできる食品ロスの対策には、どのようなものがあるのでしょうか。
地球環境に優しく、食費の節約にもなる「捨てない食卓」の始め方を、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんが食材ごとに解説します。
前回は、オリンピックでも問題となった「弁当」の大量廃棄が、なかなか改善されない理由について解説しました。
今回は、コロナ禍で消費量が減少している「牛乳」に着目します。
スーパーの牛乳、奥から取りますか? 手前から取りますか?
普段、スーパーで買い物をしていると、頻繁に見かけるのが、牛乳売り場で、期限の新しいものを取ろうと棚の奥に手を伸ばす光景です。
牛乳は、おいしさのめやすである「賞味期限」を表示したものと、5日以内の日持ちのものにつけられる「消費期限」表示のものがあります。
高温殺菌の牛乳は賞味期限表示。低温殺菌の牛乳は消費期限表示です。
私が2017年頃から2021年にかけて2,689名の方にアンケートをとったところ、「買い物のとき、奥に手を伸ばして日付の新しいものを取ったことがある」と答えた人は88%に及びました。同じ値段だったら少しでも日付の新しいものを取るのは「消費者の当然の権利」と言う人も多くいます。
しかし、みんなが日付の新しいものを選ぶと、その結果、期限の迫った、あるいは期限が切れた「売れ残り」が発生することになります。
処理コストを負担するのは、店だけではありません。私たちが市区町村に納めた税金を使い、家庭ごみと一緒に焼却処分する自治体がほとんどです。自治体によってその処理コストは異なりますが、東京都世田谷区の場合、1kgあたり59円。1kgは、ほぼ牛乳1リットルパックの重さに相当します。
期限内に使い切ることができるならば、できるだけ商品棚の手前から取る「てまえどり」を意識することで、自分が納めた貴重な税金を、食品を捨てるために費やすことなく、福祉や医療、教育にまわすことができるのです。