2021.8.25
五輪開会式で4000食廃棄した組織委員会がついた“ウソ”。なぜ日本の弁当大量ロスは止められないのか
日本では1年間に約600万トンもの食品ロスがあり、実は、そのうちの半数近くにあたる276万トンは、一般家庭から捨てられているのが現状です(2018年、農林水産省・環境省調べ)。
各家庭や個人で無理なくできる食品ロスの対策には、どのようなものがあるのでしょうか。
地球環境に優しく、食費の節約にもなる「捨てない食卓」の始め方を、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんが食材ごとに解説します。
前回は、理不尽な理由で行き場を失っている「未利用魚」に着目しました。
今回は、東京五輪でも問題となった弁当の廃棄問題について考えます。
オリンピックで起きた弁当大量廃棄
コロナ禍で、外食の機会が減っているかわりに、24時間営業のコンビニやスーパーで弁当を買う人が増えているといいます。
弁当といえば、先月の話になりますが、東京五輪の開会式で、10,000食準備した弁当のうち、4,000食が無駄になったことが、2021年7月24日のTBS「報道特集」で明らかになりました。
有観客の想定で数を見積もっており、無観客になったことで余ってしまった……と報じられましたが、無観客の決定が発表されたのは開会式の2週間以上前、7月8日です。調整するための余裕はありました。
JOC筋の情報によれば「発注の数は有観客の時から変えていない」とのこと。
私が5月に組織委員会に「人数がずれたらどう調整して食品の無駄をなくすのか」と質問したときには「キャンセルできるものはキャンセル、そうでないものは転用して無駄を出さない」と回答していました。
そうは言っていたものの、実際にはキャンセルしていなかったということです。
その後、2021年8月7日に放送されたTBS「報道特集」で、「4,000食」という数字は開会式当日の本大会会場のみのもので、実際には開会式の前から連日廃棄が続いており、関係者の告発で把握できただけでも13万食、実に1億1,600万円分もの弁当を処分していたと報じられました。しかし、これでもすべてではないとのこと。
組織委員会は、開会式当日のスタッフやボランティアらの弁当4000食分がロスになったことは認めており、全体でどれくらいの廃棄があったのかについては調査中としています。
多くのロスが生じていることについて、組織委員会は「廃棄しておらず飼料化リサイクル・バイオガス化している」と弁明しましたが、本来、十分に食べられるものをリサイクルするのは環境配慮の原則「3R」に反します。
まず最優先は「Reduce(資源を節約する、ゴミを減らす)」、次が「Reuse(再利用)」、最後が「Recycle(リサイクル・再生利用)」です。
本来は段階的に下に降りてくるべきなのに、今回は、直接最後のリサイクルの処置をしてしまいました。
リサイクルすべきは食べ残しや不可食部(りんごの芯など)であって、食べられるものはまず食べるのが優先です。
五輪に限らず、弁当やおにぎりは捨てられやすい食品です。
弁当やおにぎりを販売しているコンビニやスーパーでは日々たくさんの食品が廃棄されています。
公正取引委員会が2020年9月に発表した調査結果によれば、コンビニ一店舗あたりが捨てている食品は、1年間で468万円分に及ぶことがわかりました。
雇用されている労働者の平均年収が436万円(国税庁「民間給与実態統計調査結果」、令和元年度)ですから、一般的な雇用労働者の年収を上回るほど多くの食品を捨てているということです。