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規格外、珍しい、流通の都合…理不尽な理由で捨てられる「未利用魚」。コロナ禍で注目を集める活用法とは?

まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」といいます。

日本では1年間に約600万トンもの食品ロスがあり、実は、そのうちの半数近くにあたる276万トンは、一般家庭から捨てられているのが現状です(2018年、農林水産省・環境省調べ)。

各家庭や個人で無理なくできる食品ロスの対策には、どのようなものがあるのでしょうか。
地球環境に優しく、食費の節約にもなる「捨てない食卓」の始め方を、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんが食材ごとに解説します。

前回のテーマ食材は、家庭でもっとも捨てられやすい「野菜」でした。
今回は「魚」。理不尽な理由で行き場を失っている「未利用魚」に注目します。

効率重視で捨てられる魚の「あら」

最近、魚屋さんに通うようになりました。近所のお豆腐屋さんが2軒とも閉店してしまい、その魚屋さんでは美味しいお豆腐を仕入れて売っているからです。
最初はお豆腐目当てで魚屋さんに通うようになった私ですが、今ではすっかり魚屋さんで魚を買う楽しさに目覚めてしまいました。
お刺身は、お願いすると、予算に合わせてお造りにしてくれます。中でも新鮮なタコをぶつ切りにした「たこぶつ」は噛みごたえがあって美味しい! 炙っても香りがよく、お気に入りです。
スーパーでは並んでいる魚を見て自分で料理法を考えないといけませんが、魚屋さんなら、今日のお買い得やおすすめの料理法を教えてくれて、魚に関する知識や魚料理のレパートリーも増えます。

そして、お造りや切り身を作った際に出る魚の「あら」が、新鮮なうちに手頃な価格で手に入るのもの、魚屋さんで買い物をする良さの一つです。あらとは、魚をさばいて残るおかしら、ヒレ、エラなどの部位や、骨に付着する身の部分のこと。
あらは、身の部分に比べるとだいぶ安い上に、さっと下処理をして煮るだけでとびきり美味しい出汁が取れるので、お買い得です。

味噌汁や煮付けにしても美味しい魚の「あら」
味噌汁や煮付けにしても美味しい魚の「あら」

そんな最高食材の「あら」ですが、非常にもったいないことに、その多くが廃棄されています。スーパーの鮮魚コーナーでもパックに詰められたあらを見かけることはありますが、それはごく一部。加工の過程で出たあらの大半が捨てられているのが現状です。
買いたいけれどあまり見かけないという人もいるのではないでしょうか。

魚のあらを使った「あらー麺」を開発した麺屋武蔵の社長、矢都木二郎さんに取材した際、なぜあらの多くが捨てられてしまうようになったか、その理由を聞いて、なるほどと思いました。
魚はもともと箱にきっちりおさまりづらい形をしています。そこで、頭としっぽを切り落とし、四角い切り身にしてしまえば、箱におさまりやすく、輸送の際に効率がいいからだというのです。
昔のように、地産地消、狭い地域で消費されるなら、そこまで考えなくてよかったでしょう。でも、いわゆる広域量販店といわれる全国チェーンのスーパーや飲食店が増え、あらを活かすことより輸送効率が重視されるようになったのです。
料理人も、いちから魚をさばける人ばかりではないので、最初から、あらなどの余分な部分を落とし、下処理されたものが納品されることが増えてきたようです。

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井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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