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「畑の都合に合わせてメニューを決める」ターブルオギノ・荻野伸也シェフの“ロスゼロ”への挑戦

作りたいものではなく、畑の都合に合わせて料理を作る

飲食業界では、自分の作る料理のメニューにあわせて欲しい食材を農家さんに注文するのが“常識”。
でも荻野さんは、農家さんに「何でもいいから、あるものを送って」と頼みます。規格から外れたものでも、見たことのないような野菜でも、何でも、です。
「自分の都合に合わせろ」というのではなく、「畑の都合に自分が合わせる」というわけです。
届いた野菜でメニューを考え、料理するので、当然、シェフの力量が問われます。

「ターブルオギノ」の荻野伸也シェフ(撮影/office 3.11)
「ターブルオギノ」の荻野伸也シェフ(撮影/office 3.11)

荻野さんが規格外にこだわるようになったのは、北海道の有機野菜の生産者を訪ねたことがきっかけでした。
規格から外れてしまった野菜が山のように捨てられている現場を目撃したのです。
「これ、どうするんですか」と農家の方に聞いたところ、「一部は豚の餌になるけど、腐っちゃったら、もうそれは畑に戻すか、ゴミとして焼却処分する」との答えが返ってきました。

「ちょっと形が違うだけなのにおかしい。ある食材をどう美味しく加工するかが料理人の腕の見せ所だ」
そう考えた荻野さんは、捨てられている規格外の野菜を買って料理することに。
これが2011年、「ターブルオギノ」の始まりでした。

そこから現在に至るまで、荻野さんは、契約している北海道の野菜農家に「困っている野菜があれば出して」と話し、送られてきた野菜を使い切ることで、食材も仕入れ費もロスのない経営を実現しています。

「農家さんはそのとき、畑にある物で畑の都合によって箱を作れるので、すごく鮮度もいいですし、彼らが自信を持った物を入れてくれる」
と、荻野さんは話します。

メニューはすべて日替わり。自家製のパテやソーセージなどの食肉加工品も人気(撮影/office 3.11)
メニューはすべて日替わり。自家製のパテやソーセージなどの食肉加工品も人気(撮影/office 3.11)

なお、規格外で捨てられるのは野菜だけではありません。豚肉用の豚もそうです。
痩せすぎや太りすぎなど規格から外れたものは値付けが下がるので、処分されることもあります。荻野さんは、そのような豚も仕入れて、シャルキュトリー(ハムやソーセージ、テリーヌなどの加工品)に美味しく仕上げていきます。イノシシのソーセージなど、ジビエもです。
荻野さんは、農家の都合にあわせて、使い慣れない食材でも仕入れて、「ターブルオギノ」のデリメニューやブッフェなどで提供しています。
当然メニューは仕入れた食材によって変わりますが、お客さんからは「ここに来るといつも違うものが食べられるから楽しみ」と好評だそうです。

こうした荻野さんのやり方を見習えば、家でも、野菜を捨てないで済むはずです。

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井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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