2024.7.1
なぜ別居が必要?【逃げる技術!第18回】児相が介入するとどうなる
イラスト/藤井セイラ 監修/太田啓子弁護士(湘南合同法律事務所)
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別居はマスト? 家庭内別居じゃダメなの?
今回は、具体的な離婚へのステップのひとつ、別居について書きます。
家庭内にDVや虐待があるとわかったときには、たやすいことではありませんが、やはり別居、つまり物理的に距離を置くことが有効です。
話し合いや調停で離婚や正式な別居が成立するまで家庭内別居を続けるケースもあります。しかし、それは場合によっては数年という長い時間を要します。
大人も精神的に消耗しますし、わたしの場合には自分の弁護士から「お子さんにとって悪感情が残ることが多いのでおすすめしません」とはっきりいわれました。
実際、別居前の4ヶ月間ほどは家庭内別居の状態だったのですが、あれはいま思い出してもストレスフルな生活でした。夫は、わたしが弁護士を交えて離婚を切り出した直後こそしおらしくはしていましたが、すぐに被害者ぶるようになり、隙をついては、物理的にも、時間的にも、精神的にもこちらの領域に入ってくるのです。そのたびにわたしは混乱して、悪いのは自分なのではないか、夫にとてもひどいことをしている悪い妻なのではないか、と足元がぐらつく思いでした。
あれは「バウンダリー/人と人との精神的な境界線」を侵す行為だったと思います。弁護士も福祉課の相談員さんも、「被害者ぶるのも、こちらのスペースに侵入してくるのも、DVあるあるですよ」と教えてくれました。
家庭内別居は長引くと大人だけでなく、子どもに悪感情が残るリスクが。
家庭内別居でも、グイグイくるのがモラハラ夫
改まった謝罪や反省の弁は一切ないにもかかわらず、夫はわたしたちの眠っている寝室に突然入ってくる、ボディタッチをしてくる、何事もなかったかのように話しかけてくる、深夜までリビングでバラエティ番組をつけて酒を飲む(家の構造上、その音は母子3人で眠っている部屋に丸聞こえでした)、むやみやたらにエヘンエヘンと咳ばらいをするなど、とにかく「ここに俺はいるよ!」「構ってよ!」「許してよ!」という感じで日々、存在感を示してきました。
このように家庭内別居にはストレスやリスクがつきまとうのですが、本格的な引越し・別居にはお金がかかります。家賃や水道光熱費などのリビングコストが追加で必要になるのでできれば避けたい。当初わたしはそう思っていました。
ですが、我が家への児童相談所の聞き取り調査の結果、「父親と子どもたちとを離すように」と指導されたことに対し、応じないわけにはいきませんでした。
また、わたしが夫ともみあってケガをし、警察を呼んだときには、夫がすらすらと警察官たちにウソをつき「妻を傷害罪で訴えます」などと主張したため「このままだと本当にヤバい」と危機感を抱きました。
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離婚成立後の家庭での母子殺害事件も
2024年5月に報じられた東京都品川区での母子4人殺害事件では、父親が殺害の容疑で逮捕されました。離婚調停が成立して3日後に起きた事件でした。約1週間後には家を離れる予定だった父親が「早く家から出ていくようにしつこくいわれ、かっとなって刺した」と供述しています。調停中や離婚後であっても、物理的にそばにいれば最悪の場合には、そのような事態を招くこともあります。
DVの本質は支配や所有です。被害者が自分の元から離れるくらいならば、相手を傷つけたり亡きものにしようとする加害者もいます。
まれですが、家庭内別居からの傷害・殺害事件の例も。
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