よみタイ

歩数増加減量作戦とふたたびのセルフレジ

 セルフレジの使い方を覚えたのに加え、運動のための倍時間の散歩の結果、体重は一・五キロは減ったものの、まだ一キロの余剰分が体にくっついている。私はダウンコートが嫌いだったので、ずっとウール、カシミヤなどのコートを着ていたのだが、この冬、その重さがだんだん辛く感じられるようになってきた。もしかしたらその中に、自分の増えた肉の分もあったのかもしれない。そんな話をしたら、ダウンコートを着ていた友だちが、
「試しに着てみる?」
 と自分のコートを羽織らせてくれた。そしてそれが何て軽くて暖かいのかと感激してしまったのである。
 オーバーコートに関しては、買い直すのはもったいないし、まだ我慢できる重さなので、試しに着丈がお尻の下くらいまでの、アウトドアメーカーの中綿入りのジャケットを買ってみたら、まあこれが着心地がいい。冬場の庭仕事にはうってつけである。こんなに便利だから、みんな着るんだよなあと思いつつ、ダウンコートを買う決断はできなかった。
 インターネットで、ファッションメーカーのダウンコートには、いったいどんなデザインのものがあるのだろうかと見ていたら、「ダウンコートで着ぶくれして見えない方法」という特集があった。それを見ながら、
「着ぶくれしない方法っていったって、着ている人間が太っているんだから、そりゃあ、着たら着ぶくれするのは当たり前では」
 と画面に向かって思わずいってしまった。
 今は何とか耐えられる状況だが、来年の冬はオーバーコートの重さに耐えられなくなるかもしれない。それに自分の肉の重さが含まれているのも何が何でも避けたい。ダウンのコートも私にとっては新しい挑戦である。妙にウエストが絞ってある女性っぽいデザインではなく、かといってベンチコートのようなタイプではないラインで、私のちんちくりん体型に合うものが、この世の中にあるのだろうかと、期待しつつ少し不安になっているのである。

次回は3月22日(水)公開予定です。お楽しみに!

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『今日はいい天気ですね。れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』『たりる生活』『老いとお金』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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