よみタイ

歩数増加減量作戦とふたたびのセルフレジ

 そして私のセルフレジ問題である。思わず足を止めて、会計の様子をうかがうと、二台並んだセルフレジでは、私よりもやや年下と思われる女性と、若い男性が精算していた。店には他に客がおらず、もたついても後ろに人が並んであたふたすることはなさそう、というのが、何より幸いだった。私は男性の後ろに並び、
(セルフレジなんて慣れてます)
 と落ち着いた風を装いながら、斜め前で精算している女性の手元を凝視していた。
(そうか、あそこの部分にバーコードを読みとらせて、精算ボタンを押せばいいのか)
 などと思っていたら、私の番になった。
 意外に機械はシンプルで、わかりやすく表示がしてあった。商品のバーコードを赤いライトが点灯している部分に読みとらせて、「現金」の表示の支払いボタンを押し、小銭を硬貨入れに落としたら、レシートが出てきて完了した。百均なので支払う金額がすぐに計算できるのも助かった。あまりに簡単であっけないくらいだった。
 しかしこれで、セルフレジが使いこなせるかといったら、まだ自信がない。きっと機械には様々なタイプがあるだろうし、もっと複雑なのもあるかもしれない。考えてみれば、レジでの精算は、バーコードを読みとらせて、カードか現金か、スマホ決済をする人はその手続きボタンを押し、支払いを済ませばいいだけの話なのだが、やはり緊張する。
 いつも行くスーパーマーケットでは、セミセルフレジなので、これには慣れているけれど、先日、カードを入れても機械が受け付けをせず、そのままフリーズしたのであせっていると、店員さんが、すぐにやってきて、
「今日は、機械の調子が悪くて、申し訳ありません」
 といって、調整してくれて支払いができた。とにかくこういったものに慣れていないので、何かトラブルが起こると、全部、自分のせいだとあせるのである。しかしいちおうセルフレジは経験したので、次は敬遠していた駅前の書店のセルフレジで試してみようと思っている。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『今日はいい天気ですね。れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』『たりる生活』『老いとお金』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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