よみタイ

歩数増加減量作戦とふたたびのセルフレジ

 私も単発の仕事をした出版社から、手書きではなくエクセルで請求書を送れといわれて、わけがわからず、窓口になってくれた編集担当者に泣きついたのだ。彼女が親切にテンプレートを作ってくれたので、それを使って何とかなった。このテンプレートは後生大事にしなくてはと思っている。出版契約書も最近はパソコン上で処理するところも出てきたので、体を成しているかどうか、無事に送れたかどうか、編集者から受領のメールが来るまで心配でならないのだ。
 その友だちは、パソコンが苦手なために、これまで必要な書類は、手書きにしてそれをファクスで送っていたという。しかし仕事先から、
「もうファクスは使うな。エクセルを使って添付ファイルで送れ」
 と最後つうちょうをつきつけられてしまった。仕事相手も、ファクスが届くたびに、舌打ちをしていたのに違いない。
 それを受け取った友だちが、
「どうやったらいいのかわからない」
 と相手に訴えたところ、
「あなた、現役で仕事をしているんでしょ。だったらそれくらい覚えなさいよっ」
 と怒鳴られたのだそうだ。それを聞いた私は、
「そりゃあ、そうだわねえ」
 とうなずいたのである。
 今は企業の事務系の業務で、エクセルを使うことは必須なのに違いない。追い詰められた友だちはパソコンに詳しい若い知人に来てもらい、半泣きになりながら、基本的なエクセルの使い方を習ったそうだ。それでも使いこなすまではいかず、困ったときには、その人に頼っているといっていた。パソコン、そしてスマホが世の中に登場して、それに順応していかないと、仕事が滞るようになってきたので、年齢が上の人間も、その使い方を覚えなくてはならなくなったのだ。

1 2 3 4 5

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『今日はいい天気ですね。れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』『たりる生活』『老いとお金』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

週間ランキング 今読まれているホットな記事