2022.7.27
スマホ記事とおばちゃんレッテル
数年ほど前に問題になっていたが、健康関連のサイトで、ひどい肩こりは幽霊が原因のこともある、などとライターが書いていたという話もあった。そのサイトがどうなのかはわからないが、インターネット記事の原稿の報酬が、一テーマで五百円といったひどさのところもあったと記憶している。物を書きたいという人たちの弱みにつけ込んで、意に染まない記事を安い原稿料で書かせても平気な、図々しい輩がいるのだ。お金のためなら何でも書くというスタンスの人であれば、そういう仕事を引き受けるのに他人があれこれ口出しすることはできないが、それを世の中に出すのに違和感はないのだろうか。署名原稿ではないし、内容がどんなものでも、自分の書いた文章が、インターネットで流されれば、それで満足なのだろうかと思う。
私はデビューしてすぐ、高名な女性誌から、「結婚した女性は勝利者」という原稿を書いて欲しいと依頼された。それは私が考えていることとは真逆なので、もしかしたら他の人と勘違いしているのではないかと思い、
「私の書いたものを、お読みになったことはおありでしょうか」
と聞いた。すると電話口の編集部の男性は、
「わかっています。語り口がとても面白いので、ご意思を曲げて書いていただければ」
といったので、びっくり仰天した。大手出版社の編集者に、こんな人間がいるのかと驚くしかなかった。今はいないと信じたいが、平気でこういうことをいってくる編集者がいたのだ。
問題のある記事を書いたライターは、依頼してきた人の企画に沿って書いたのだろう。それに何の疑問も持たなかったのだろうか。想像するに原稿料も高額だったとは考えられず、いったいどうしてそんなことになってしまうのかと情けなくなるばかりだ。
根本的には、おばちゃんレッテルを貼る内容を依頼する側に、大きな問題がある。
「こんなことをしていると、みんなにおばさんって思われますよ。それっていやですよねー」
とにやにやしている顔が目に浮かぶようだ。CMには人を不安にさせて商品を売るものがあるが、こういった記事も、人を不安にさせて目を引き、記事を読ませようとする。我々がそれを読むことによって、誰かが潤うしくみになっているのだろう。