よみタイ

鏡の中の老女とおばあさん問題

 何かないかなあと考えているとき、外国作品の編み方を日本語に翻訳して販売しているサイトがあったのを思い出した。以前、何点か購入した記憶がある。そこを見てみたら、春夏の肌寒い時期や、冷房、日焼け、汗取り対策によさそうな、透かし編みのミニマフラーが見つかった。これまでは市販のコットンガーゼのミニマフラーを使っていたのだが、あまりに使い倒して穴があいたのを、引っ越しの際に二本、処分したので、夏用の巻物がなくなってしまった。
 私の苦手な透かし編みだけれど、曲線ではない直線的な透かし編みで、私の頭の中にはその編み図はインプットされていなかった。他にも応用できそうな便利な編み図なので三百七十円で購入した。指定糸はメリノウールだったが、手持ちの同じ太さの、コットンの比率が多い、水色、紺、白のメランジタイプのソックヤーンを使うことにした。汗をかいても気軽に洗えるのがいい。できあがり幅が三十センチほどで、作り目も六十七目と少ないのもよかった。
 まだ編み図が完全に頭に入っておらず、確認しながら編んでいるが、頭に入ったらもっと進みがはやくなると思う。若い頃はすぐに編み図が記憶できたのに、なかなか頭に入らなくなってきたからだが、これも仕方がない。このミニマフラーの具合がよかったら、編むのに適した糸が他にもあるので、それらを編みつつ、仕事もしつつ、「く」の字厳禁で暮らしていきたい。

5/26、群ようこさんの新刊発売!

「しない生活」だからこそ見えた、大切なこと、やりたいこととは……。

編み物、動画鑑賞、新聞購読、掃除、読書、マスク作り……いくつになっても、家の中でも、近所でも。喜びや楽しみは、いつでも見つけられる。
彩りに満ちた日常をめぐるエッセイ集。

『今日は、これをしました』の詳細はこちらから

1 2 3 4 5

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

関連記事

群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『今日はいい天気ですね。れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』『たりる生活』『老いとお金』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

週間ランキング 今読まれているホットな記事