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菅野久美子 私たちは癒されたい ~「女風」に通う女たち~

新婚1ヶ月の人妻を女性用風俗デビューにかりたてた〝呪い〟

女性用風俗、略して「女風」。かつては「男娼」と呼ばれ、ひっそりと存在してきたサービスだが、近年は「レズ風俗」の進出など業態が多様化し、注目を集めている。
女性たちは何を求めて女風を利用し、そこから何を得たのか――
『ルポ 女性用風俗』の著書もあるノンフィクション作家の菅野久美子さんが、現代社会をサバイブする女性たちの心と体の本音に迫るルポ連載。
今回は、自身の結婚式の1ヶ月後に女性用風俗を利用したという結衣さん(仮名・30歳)のお話を伺います。

「私、結婚式が終わってひと月後に初めて女風を利用したんです。私で良かったら取材して頂いて大丈夫です」

 ある日、一人の女性からTwitterのDMが届いた。彼氏や夫などのパートナーがいても「女風」を利用する女性たちは多い。私の取材の実感だと半数近くの女性は、パートナーがいる状態で女風を利用しているのが実情だ。
 結婚後のセックスレスや、性の不一致――。個々の事情を取材していると、そこにはやむにやまれぬ動機や社会背景が横たわっていることもある。
 社会規範では簡単にぶった切ることのできない「何か」。私はその「何か」を拾い上げたいと思い、取材を続けている。しかしこれまで様々な女性たちに取材を重ねている私でも、結婚後、わずか1ヶ月後に女風を利用した女性には、未だかつて遭遇したことがなかった。
 新婚1ヶ月月といえば新婚旅行も済み、世間的には最も楽しい時期というイメージがあるのではないだろうか。そんな新婚ほやほやの女性が、なぜ女風を利用しようと思ったのだろう――。私は、女性の話を聞くべく休日の新橋駅に足を運んだ。

 待ち合わせ場所に現れたのは、都内在住の広告関連の会社に勤める高橋結衣さん(仮名・30歳)だ。結衣さんは、ウェーブがかったミディアムヘアの真面目そうな女性である。
 新橋のカラオケボックスの一室に入り、飲み物を注文し、一息つく。近くのカフェがどこも満席だったこともあり、私と結衣さんは急遽インタビュー場所としてカラオケボックスに駆け込んだのだ。コロナ禍で、しかもオフィス街である新橋という土地柄か、店には私たち以外の客の気配はない。

「結婚式が終わった1ヶ月後に女風って、何か理由があるんですか?」

 私は単刀直入に切り出した。
 結衣さんは、「自分で自分のことを、本当にヤバいヤツだと思うんですけど」と何度も前置きしながら、ゆっくりとこれまでのことを話し始めた。既婚者であるにもかかわらず、風俗を利用している罪悪感を結衣さんから感じ取り、私は少しだけ胸が痛くなった。

取材を受けてくださった高橋結衣さん(仮名・30歳)。 撮影:菅野久美子
取材を受けてくださった高橋結衣さん(仮名・30歳)。 撮影:菅野久美子
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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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