2021.3.13
「なぜ露出する服で…?」ー無関心だった夫が、夜遊び帰りの妻に感じた危機感(第4話 夫:康介)
奔放でものおじしない女の魅力
「最近はどんな記事を書いてるんですか?」
仲通り沿いのイタリアンで、小坂瑠璃子と向き合う。5年前と何ひとつ変わらない……いや、さらに成熟した魅力を纏う彼女の姿に康介の心は浮き立った。
瑠璃子はTwitterで9万フォロワーを抱えるフリーライターである。Twitterを触ったこともない康介にとって瑠璃子は「未知の世界の人」という感じだ。
彼女は32歳で、妻の麻美と同い年。二人とも小柄で華奢で美人という共通点はあるが、瑠璃子のほうが麻美よりすべてのパーツが大きい。そして何より生き方もキャラクターもまるで違う。
まず、瑠璃子は康介に遠慮なくものを言う。
「今は、マッチングアプリのリアルを取材してます。面白いですよ。櫻井さん、アプリの経験あります?」
「あるわけないじゃないですか(笑)」
突拍子のない質問に思わず吹き出した。相変わらず面白い女だ。康介が呆れ顔を見せてもお構いなしで、彼女は『ペアーズ』と『ティンダー』というアプリの利用者層の違いについて意気揚々と語り始めてしまった。
昔から瑠璃子と話すのは楽しかった。おそらく天性のものなんだろう、警戒心の人一倍強い康介にも初対面からするりと懐に入ってきた。そして本当によく喋る。
5年前も、有名私大を休学してまでピースボートで世界一周したとか、卒業後も就職はせず、知人のツテで通訳の仕事をしながらTwitterに勤しんでいたとか……そんな話を聞かされるたび、驚いたり感心したり忙しかった。
康介自身は神戸の私立高校から早稲田の政経学部に進学、在学中に司法試験合格、と典型的なエリートコースを生きてきた男だ。
しかし瑠璃子に会うと、自分までしがらみから解き放たれるような、新たな扉を開くような、開放的な気持ちになれた。