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不良夫婦
あなたは「結婚」という制度に疑問を感じたことはないだろうか。

連日メディアを騒がせる不倫ゴシップは氷山の一角。女性の社会進出、SNSや出会い系アプリの普及……結婚制度が定められた120年以上前とは、社会も価値観も何もかも違っているのだ。
これは、時代にそぐわぬ結婚制度の抜け穴を探し始めた、とある夫婦の物語。

不妊治療の提案を聞き流したことで、夫婦の歪みが顕在化した櫻井夫妻。夫への関心を失った妻・麻美の前には元彼が現れ、夫・康介はクライアントの瑠璃子とのランチで心浮き立っていたが、妻の遅い帰宅に不穏な気配を感じ取っていた――

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(隔週土曜で更新予定です)

「暇」に縛られ不自由になる美人妻の苦悩。優雅な生活に満たされないまま、昔の男に再会した夜(第5話 妻:麻美)

結婚相手は「堅実な男」で間違いない……はずだったのに

独身時代、大抵の男は見尽くしたと麻美は思っている。

20代後半、結婚を一つの目標として設定してから、麻美はほとんど恋愛感情を排除して夫にふさわしい男を探した。

衝動的に湧き上がる恋愛感情や欲望なんていらない。些細なことで喜んだり悲しんだり、そんな感情の起伏は結婚生活に必要ない。

それなりの財力、出自、安定感は必須。そして真面目で堅実、女に対しては多少臆病な気質であるくらいの方が結婚後にトラブルを起こすリスクは低いだろう。

外見だとか女の扱いに長けてるだとか、女を惹きつける男性的な魅力なんてどうでもよかった。

『自分に優雅で快適な生活を与えられる男』

これが麻美にとっての結婚の唯一無二の条件だったのだ。

けれどそんな中で、圏外の男にうっかり心を奪われかけたことが一度だけあった。それが今目の前に現れた男、晋也なのだ。

「麻美、会いたかったよ」

食事会に遅れてやってきた彼は、個室に入るなり当然のように麻美の隣に腰を下ろす。

「……相変わらず美人だね。旦那に妬けるなぁ」

だめだ、と思いつつ動揺した。

こんな定形文のようなセリフ、普段ならば何とも思わない。なのにこの男にだけは、なぜだか昔から激しく気持ちを揺さぶられる。

長身の大きな身体に、やや強引すぎるアプローチ。学生時代にラグビーをしていたという晋也は、まさに突進型の獣のようだ。

「こんなつまらない飲み会、いい加減飽きたけどさ。麻美がいるって聞いたから来ちゃったよ」

そうさり気なく耳元で囁かれたとき、麻美は身体中を掻きむしられるような衝動に駆られた。

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山本理沙

やまもと・りさ●84年 東京都生まれ。日本女子大学文学部卒卒業後、外資系航空会社客室乗務員、金融機関・コンサルティングファームの秘書業務を経てフリーランスへ。
2015年〜2019年に東京カレンダーWEBにて『東京婚活事情』『結婚願望のない男』『東京ホテル・ストーリー』など多数執筆したのち、2020年10月講談社文庫より初書籍『不機嫌な婚活』を出版。よみタイで好評連載中の漫画『恋と友情のあいだで』(里奈Ver.)共著原作者。『不良夫婦』では(妻side)を執筆。

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Twitter●山本理沙/WEB作家




安本由佳

やすもと・ゆか●81年 奈良県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、化粧品会社広報、損害保険会社IT部門勤務を経てフリーランスへ。
2016年〜2020年1月 東京カレンダーWEBにて『二子玉川の妻たちは』『私、港区女子になれない』など多数の連載を執筆したのち、2020年10月講談社文庫より初書籍『不機嫌な婚活』を出版。よみタイで好評連載中の漫画『恋と友情のあいだで』(廉Ver.)の共著原作者。『不良夫婦』では(夫side)を執筆。

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