2021.4.10
「20万なら安いもの」妻に突然ジュエリーを贈った夫…その裏に隠された本音とは(第6話 夫:康介)
「なぜそこまで知っている?」妻の好みを把握している女
「そういう時はプレゼントを贈るのがオススメです」
恥ずかしながら妻との仲が険悪だ――愚痴をこぼした康介に、こんなアドバイスをくれたのは小坂瑠璃子だった。
5年ぶりに再会し、二人でランチをした日から、彼女はちょくちょく私的な連絡をよこす。つい先ほども「近くにいるので」と、まるで親しい友達か彼女であるかのごとくランチに誘ってきた。
会う必要はないし、適当に理由をつけて断ってもよかった。クライアントとあまり近しくなるというのもよろしくない。
ところが康介はどうしても瑠璃子を邪険にできず、結局また前回と同じ事務所近くのイタリアンで彼女と向き合っているのだった。
瑠璃子にはいつも調子を狂わされる。相変わらず彼女のペースに巻き込まれた康介は、まったくその必要もないのに、妻との喧嘩の一部始終をつぶさに吐き出していた。
「プレゼントは効きますよ。ジュエリーでも贈って機嫌をとれば、ホームパーティーくらい来てくれますって」
瑠璃子は独身のはずだが、わかったような口ぶりで康介を諭す。そして「あった」と声を上げると自信満々にスマホ画面を康介に見せてきた。
「このブレスとか。奥さま、ヴァンクリ好きですよね」