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ヒグマが出没したら、通行止め! 沢の中を歩いて向かう 秘境中の秘境「カムイワッカ湯の滝」【山の名&珍プレイス 第11回 後編】

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滝つぼの雰囲気は変わってしまっても、お湯は以前と同じピリっと酸っぱい強酸性

ところで、カムイワッカ湯の滝は20年前まで、誰もが自由に立ち入れる場所だった。だが、落石が多発して危険なために、2006年に立ち入りを制限。先に述べたように2023年に解除されるまでは入れるのは「2の滝」までとなっていた。しかし、「2の滝」まででは他の地域の沢と風景はさほど変わらず、湯温も30℃くらいしかない。実際のところ、「温泉が流れる沢」としてのカムイワッカの魅力は半減していた。

「2の滝」。2番目の滝ということにはなっているが、実際は段になっていて、複数の滝の集合体とも感じられる
「2の滝」。2番目の滝ということにはなっているが、実際は段になっていて、複数の滝の集合体とも感じられる

だが、最低限の整備を行ない、入口に簡易的な管理所を設け、オンラインから事前予約を行なう形を整え、再び「4の滝」までの立ち入りが実現したわけである。これにより、もはや伝説と化していたカムイワッカ湯の滝が、改めて楽しめるようになったのであった。

「3の滝」。高さは7mあるが、写真の右側から登っていくことができる
「3の滝」。高さは7mあるが、写真の右側から登っていくことができる
思い思いに沢を楽しむ登山者を「3の滝」の上から見下ろす。事前予約に基づいて多くの人が同じ時間に登り始めるため、秘境の温泉といえども、沢の中は意外と賑やかだ
思い思いに沢を楽しむ登山者を「3の滝」の上から見下ろす。事前予約に基づいて多くの人が同じ時間に登り始めるため、秘境の温泉といえども、沢の中は意外と賑やかだ
もっとも見ごたえがある「4の滝」。この滝つぼは近年の落石で埋まりつつあり、“湯船”として入ることは禁止されている。見るだけで我慢するしかない
もっとも見ごたえがある「4の滝」。この滝つぼは近年の落石で埋まりつつあり、“湯船”として入ることは禁止されている。見るだけで我慢するしかない

以前の「4の滝」の滝つぼは見事な円形状で、湯温もちょうどよく、あまりにもよくできている天然の「滝つぼの温泉」だった。残念なことに大小の落石によって滝つぼの中がかなり狭くなり、危険な状態にもなってしまった。これを書いている僕が初めてカムイワッカ湯の滝を訪れたのは2002年だったが、正直なところ、「4の滝」の風景は昔のほうがよかったと思う。自然の力による変化はどうしようもないが、いつの日か大増水で滝つぼ内の岩が再び流れ出てしまえば、またきれいな形状が復活するかもしれない。

2002年、立ち入り規制がなされる前の「4の滝」。円形の滝つぼは広く、小さなプールのようであった。水着の女性も多く、写真は撮りにくかった……
2002年、立ち入り規制がなされる前の「4の滝」。円形の滝つぼは広く、小さなプールのようであった。水着の女性も多く、写真は撮りにくかった……
2002年当時は入り口で草鞋を借りることができ、滑りやすい沢の中で重宝した
2002年当時は入り口で草鞋を借りることができ、滑りやすい沢の中で重宝した

カムイワッカの源泉はPH1.6の強酸性である。そのために水が流れている沢の中には苔が生えず、ぬめりもない。しかし、水が流れていない場所は非常に滑りやすく、気を抜いていると転倒しがちだ。受け付けでは滑りにくいウォーターシューズと頭部を守るヘルメットを貸し出しており、出発前に必ず身に着けなければならない。

水着は不要。山歩き用のウェアで温泉を浴びてしまおう!

前編で紹介した「川原毛大湯滝」と異なるのは、カムイワッカ湯の滝では水着を着用するわけではないことだ。ここはあまりにもワイルドすぎて、わざわざ着替えるような気持ちの余裕もない。だから、大半の人はそのままの姿で川の中に入っている。

最上部の「4の滝」の滝つぼには入れなくても、別の滝つぼでも温泉は楽しめる。ただし、頭部を守るヘルメットはつねに装着しておこう
最上部の「4の滝」の滝つぼには入れなくても、別の滝つぼでも温泉は楽しめる。ただし、頭部を守るヘルメットはつねに装着しておこう
コケが生えない水の中は滑らず、急流の中に座って温泉を楽しむことも可能だ
コケが生えない水の中は滑らず、急流の中に座って温泉を楽しむことも可能だ
滝つぼや急流が怖い人は、このように足がつくくらいの浅い場所で遊ぶといい
滝つぼや急流が怖い人は、このように足がつくくらいの浅い場所で遊ぶといい

「カムイワッカ湯ノ滝のぼり」には人数制限があり、予約できるのは1時間につき30名、1日当たり210名まで。2026年の場合、期間は7月1日から9月30日だった。料金は2900円である。また、8月のお盆の期間前後はマイカー規制もあり、入口までシャトルバスを利用する必要も出てくる。そんなこともあり、カムイワッカ湯の滝は早めに十分な計画を立てないと体験できない。ヒグマの生息密度が世界有数の場所でもあり、ヒグマが出没して立ち退かない場合も立ち入りが制限され、悪天候時も閉鎖される。思い立ってすぐに行ける場所ではなく、当日の状況にも大きく左右されるのが難点だが、それでも行ってみるだけの価値はあるはずだ。

落差40mの「カムイワッカの滝」。この場所を見物するための遊覧船は2022年の“知床遊覧船沈没事故”で有名になってしまったが、本来は安全に運営されている
落差40mの「カムイワッカの滝」。この場所を見物するための遊覧船は2022年の“知床遊覧船沈没事故”で有名になってしまったが、本来は安全に運営されている

ちなみに、カムイワッカ川の海岸間近には「カムイワッカの滝」も存在する。名称が「カムイワッカ湯の滝」と紛らわしいが、こちらも見ごたえは十分。ウトロ発の遊覧船に乗って見物に行けるので、カムイワッカ湯の滝と併せて楽しむとよいだろう。

駐車場は18台まで。予約時間ギリギリに現地へ到着しても停められないこともあり、余裕を持って行動したい(地図の参照元:YAMAP <a href="https://yamap.com/maps/11/trails " rel="noopener" target="_blank">YAMAPの当該箇所はこちら</a>)
駐車場は18台まで。予約時間ギリギリに現地へ到着しても停められないこともあり、余裕を持って行動したい(地図の参照元:YAMAP YAMAPの当該箇所はこちら)

次回、連載第12回は11/1(日)9:00公開予定です

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高橋庄太郎

たかはし・しょうたろう
山岳/アウトドアライター。1970年宮城県仙台市生まれ。高校の山岳部で山歩きを始め、出版社勤務後の2年間の無職時代には国内外のアウトドア旅へ。その後フリーランスのライターとなり、ウェブメディアや雑誌を中心に執筆活動を続けている。近年はイベントやテレビへの出演も多く、アウトドアギアのプロデュースも手掛けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)、共著に『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など多数。

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