性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。
これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ、歌舞伎町で働く理系女子大生リカ、セックスレスの人妻風俗嬢ハルカ、パパ活・パーツモデルで稼ぐカオルの4人の女性を紹介してきました。
前回は、妊娠中の人妻風俗嬢・アヤカの風俗と育児の両立生活が明かされました。
コロナ禍での妊娠をきっかけにお店をお休みしているアヤカは、今後風俗に戻ることがあるのか……彼女の本音に迫ります。
2020.11.13
「風俗があってよかった」人妻風俗嬢の洩らした本音
育児・介護・風俗のローテーション
「ところで、風俗での収入はどういうことに遣っていたの?」
「えっとー、ほぼ遣わずに……。子供にかける費用以外には遣わずに、ほとんどとってあります」
「貯金して?」
「そうです。普通に自分の口座に入れてますけど、それは家で使う口座とは違うので、バレようがないやつです」
前からそうだったが、彼女が風俗で働くことの主目的というのは、子供のためであって、すべてにおいて自分のことは二の次なのだ。だからこそ私も、単純に倫理観を振りかざすようなことはしたくない。
一昨年の年末、群馬県にいるアヤカの母親は脳出血で倒れたそうだ。
「それで実家に帰って、リハビリに連れて行ったり、話したり、家事手伝ったりっていうのを、それこそ今回のコロナ騒ぎが起きるまで、ずーっとやってて……」
「てことは、実家の母親の世話と風俗での仕事を並行してやってたの?」
「そうですそうです。風俗行かない日は実家に帰って、みたいな。だいたい週に三日、四日は行ってましたね」
「実家に行くのは日帰り?」
「そうです。子供を保育園とか学校に送り出して、それから実家に行って、夕方前に戻ってくるって感じです」
「実家までってどれくらいの距離?」
「えーっと、高速で飛ばして片道二時間くらいです」
「はあーーっ」
「もうあっという間に、一日が終わっちゃいますね」
母親は再婚相手と、アヤカの上の妹との三人で住んでいるそうなのだが、同居する二人は仕事が忙しく、半身に麻痺が出ている母親の面倒を日中は見られないという。彼女はそうした話を、窮状を訴える口調ではなく、淡々と語る。