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小野一光「限界風俗嬢」
過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。
性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ歌舞伎町で働く理系女子大生リカセックスレスの人妻風俗嬢ハルカパパ活・パーツモデルで稼ぐカオルの4人の女性を紹介してきました。

前回は、妊娠中の人妻風俗嬢・アヤカの風俗と育児の両立生活が明かされました。
コロナ禍での妊娠をきっかけにお店をお休みしているアヤカは、今後風俗に戻ることがあるのか……彼女の本音に迫ります。

「風俗があってよかった」人妻風俗嬢の洩らした本音

育児・介護・風俗のローテーション

「ところで、風俗での収入はどういうことに遣っていたの?」
「えっとー、ほぼ遣わずに……。子供にかける費用以外には遣わずに、ほとんどとってあります」
「貯金して?」
「そうです。普通に自分の口座に入れてますけど、それは家で使う口座とは違うので、バレようがないやつです」
 前からそうだったが、彼女が風俗で働くことの主目的というのは、子供のためであって、すべてにおいて自分のことは二の次なのだ。だからこそ私も、単純に倫理観を振りかざすようなことはしたくない。
 一昨年の年末、群馬県にいるアヤカの母親は脳出血で倒れたそうだ。
「それで実家に帰って、リハビリに連れて行ったり、話したり、家事手伝ったりっていうのを、それこそ今回のコロナ騒ぎが起きるまで、ずーっとやってて……」
「てことは、実家の母親の世話と風俗での仕事を並行してやってたの?」
「そうですそうです。風俗行かない日は実家に帰って、みたいな。だいたい週に三日、四日は行ってましたね」
「実家に行くのは日帰り?」
「そうです。子供を保育園とか学校に送り出して、それから実家に行って、夕方前に戻ってくるって感じです」
「実家までってどれくらいの距離?」
「えーっと、高速で飛ばして片道二時間くらいです」
「はあーーっ」
「もうあっという間に、一日が終わっちゃいますね」
 母親は再婚相手と、アヤカの上の妹との三人で住んでいるそうなのだが、同居する二人は仕事が忙しく、半身に麻痺が出ている母親の面倒を日中は見られないという。彼女はそうした話を、窮状を訴える口調ではなく、淡々と語る。

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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