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小野一光「限界風俗嬢」
過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。
性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ歌舞伎町で働く理系女子大生リカセックスレスの人妻風俗嬢ハルカパパ活・パーツモデルで稼ぐカオルの4人の女性を紹介してきました。

前回から、妊婦風俗嬢として働くアヤカが登場。
継父に辛く当たられる幼少期を経て、高校を卒業した彼女は自身の家庭を持つものの……。

二児の母を人妻デリヘルへ追い込んだ、義実家からの“経済的DV”

12歳上の夫とのデキ婚

「高校を出たら看護系の学校に行きたかったんですけど、その時期に父の不倫が原因で、両親の間で離婚騒ぎが起きたんです。それで母を独りにするわけにもいかないから、私は進学を諦めて就職しました」
 長女としての責任感がそうさせたのか、高校を卒業したアヤカは、大手電機メーカーに勤めて事務の仕事に就く。
「父と別居した母は、スナックで働き始めました。会社に勤める私は、給料が二十万円くらいあったので、その三分の二を家に入れていました」
 その勤務先で、彼女は前夫と出会う。
「同じ会社で私と接点のある、十二歳年上の人でした。年上だから落ち着きがあって、私も気持ち的に楽だったんですね。とくに外見の好みとかってなかったので、一年くらい付き合ってたら子供ができて、結婚しました」

 年上の相手を選んだことについて、私が「やっぱり父親的な部分を求めてたのかなあ」と漏らすと、アヤカは黙って頷く。そこで私は「でも、その年上の夫がDVをするようになったんだよね」と言葉を足した。
「まあ、殴ったりとかではないんですけど、乱暴な物言いとか、体をかなり強く引っ張られたりとか……」
「なにかきっかけがあったの?」
「向こうの母親から『子供が生まれるし、長男だから帰って来れば』って言われて、上の子を産む前に、向こうの実家で同居するようになったんですね。それで、数年間は何事もなかったんですけど、下の子を妊娠するちょっと前から、夫が変わっちゃったんです。下の子ができたときも、半分無理やりやられたって感じでしたから……」
 聞けば、当時の夫の父親も実父ではなく、母親の再婚相手だったという。
「それで、夫とお父さんは仲が良くなかったんですけど、私はそのお父さんとは仲良くしてたんですよ。好きな野球チームの試合を一緒に見に行ったりとか、ふたりで飲みに行ったりとか……。それが気に食わなかったのかもしれないですね」

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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