性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。
これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ、歌舞伎町で働く理系女子大生リカ、セックスレスの人妻風俗嬢ハルカ、パパ活・パーツモデルで稼ぐカオルの4人の女性を紹介してきました。
前回から、妊婦風俗嬢として働くアヤカが登場。
継父に辛く当たられる幼少期を経て、高校を卒業した彼女は自身の家庭を持つものの……。
2020.10.16
二児の母を人妻デリヘルへ追い込んだ、義実家からの“経済的DV”
12歳上の夫とのデキ婚
「高校を出たら看護系の学校に行きたかったんですけど、その時期に父の不倫が原因で、両親の間で離婚騒ぎが起きたんです。それで母を独りにするわけにもいかないから、私は進学を諦めて就職しました」
長女としての責任感がそうさせたのか、高校を卒業したアヤカは、大手電機メーカーに勤めて事務の仕事に就く。
「父と別居した母は、スナックで働き始めました。会社に勤める私は、給料が二十万円くらいあったので、その三分の二を家に入れていました」
その勤務先で、彼女は前夫と出会う。
「同じ会社で私と接点のある、十二歳年上の人でした。年上だから落ち着きがあって、私も気持ち的に楽だったんですね。とくに外見の好みとかってなかったので、一年くらい付き合ってたら子供ができて、結婚しました」
年上の相手を選んだことについて、私が「やっぱり父親的な部分を求めてたのかなあ」と漏らすと、アヤカは黙って頷く。そこで私は「でも、その年上の夫がDVをするようになったんだよね」と言葉を足した。
「まあ、殴ったりとかではないんですけど、乱暴な物言いとか、体をかなり強く引っ張られたりとか……」
「なにかきっかけがあったの?」
「向こうの母親から『子供が生まれるし、長男だから帰って来れば』って言われて、上の子を産む前に、向こうの実家で同居するようになったんですね。それで、数年間は何事もなかったんですけど、下の子を妊娠するちょっと前から、夫が変わっちゃったんです。下の子ができたときも、半分無理やりやられたって感じでしたから……」
聞けば、当時の夫の父親も実父ではなく、母親の再婚相手だったという。
「それで、夫とお父さんは仲が良くなかったんですけど、私はそのお父さんとは仲良くしてたんですよ。好きな野球チームの試合を一緒に見に行ったりとか、ふたりで飲みに行ったりとか……。それが気に食わなかったのかもしれないですね」