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小野一光「限界風俗嬢」
過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。
性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ歌舞伎町で働く理系女子大生リカセックスレスの人妻風俗嬢ハルカパパ活・パーツモデルで稼ぐカオルの4人の女性を紹介してきました。

前回は、妊婦風俗嬢として働くアヤカが最初の結婚で受けた“経済的DV”が明かされました。
それから三年が経ち、再び彼女を取材すると……。

四人目妊娠中の人妻が語る“育児と風俗の両立”

四人目を身ごもっていたアヤカ

 前回の取材の三年後、である。
 過去を知る私の取材をふたたび受けてくれるかどうか、不安な気持ちを抱きながら、私は再取材の依頼を、アヤカのライン(LINE)に送った。

〈おはようございます。ご無沙汰してます。実は今妊婦で、ご期待に添えるかどうか…〉
 
 そうした書き出しで始まる返信が、送信の翌日に届いた。なんと、アヤカは前回の取材時と同じく妊娠していた。あのときの子供の次ということであれば、彼女にとって四人目の子供ということになる。詳しく触れられていないが、父親は誰なのだろう。前に話していた、三人目の子供の父親なのだろうか。
 幾度かのやり取りを繰り返し、取材の承諾を得ることができた。彼女が指定した待ち合せの場所は、前回と同じ郊外の町である。
 妊娠中ということで気を遣い、待ち合せ場所を駅前ではなく、より彼女の住まいに近いコンビニの駐車場にした。
 当日、アヤカは白地のTシャツに、グレーの柔らかい生地のスカートという姿で現れた。前回と変わらず質素な姿だ。ただ、異なるのはマスクをしているということ。コロナ禍のもと、妊娠中ということであれば、普段以上の警戒が必要である。そんななかで取材を受けてくれたことには感謝しかない。
「ご無沙汰してます」
「いやあ、ご無沙汰です。しかもまた妊娠中とは……」
「ははは、本当ですよねえ。小野さんから連絡をいただいたとき、なんでまたこのタイミングでって思いましたよ」
 車内でそんな話を交わしながら、前回と同じラブホテルを目指す。この場所からもそう離れていない。アヤカによれば、今日は小さな子供は母親のところに預けてきたとのこと。上の子供たちは学校に行っているそうだ。

 ホテルに着くと、前回と違い、わりと安価な部屋が空いていたのでそこを選択。部屋へと向かう。前回もそうだったが、外見で明らかに妊婦だとわかる女性とラブホテルに入るとき、どうか別の客に会いませんように、と小さく願ってしまうのは、やはり背徳感があるからだろうか。
「ちなみに、いまは妊娠何カ月なの?」
「ええっと、四カ月です」
 ソファーに座ったアヤカは答えた。そこで私は不躾な質問をぶつける。
「あの、お父さんは同じ方?」
「ははっ、そうですね」
 その答えに胸を撫で下ろす。たしか子供たちが懐いていると聞いていたから、別れていたりしないか心配だったのだ。アヤカによれば、一番上の子が十四歳、次が九歳、そして一番下がもうすぐ三歳だという。ちなみに彼女自身は三十四歳である。
「前に取材したとき、一番下の子のお父さんとの結婚については消極的だったけど、いまも入籍はしてないの?」
「しましたしました。もうほんとに生まれる直前に……」
 つまり、前のインタビューの二カ月半後に入籍したことになる。当然の如くその真意を尋ねた。
「まあ、向こうから改めて結婚しようと言ってきて、こちらも拒否する理由はなく、ってところですかね」

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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