よみタイ

小野一光「限界風俗嬢」

四人目妊娠中の人妻が語る“育児と風俗の両立”

攻められるより、攻める方が楽

「若い客層と、そうでない客層だと、どういう違いがあるのかなあ?」
「なんか、若いお客さんって全部任せるって傾向がありますね。だから私がいろいろ動いていました。逆に慣れてる年配のお客さんは、向こうからガツガツ来る感じで、積極的に攻めてくるんです」
「どっちが楽とかってある?」
「それは、私に任される方が楽でしたね」
「つまり、攻め続けられる方が辛いってことだよね。たとえばオモチャを使われて、何回もイカされたりとか……」
 その昔、風俗嬢のインタビューでよく耳にしたのが、大人のオモチャのなかでも、電マ(電気マッサージャー)を使ったプレイについてのこと。彼女たち曰く、「抗いようがなく、機械のようにイカされてしまう」との意見が多かったことを思い出す。だが、アヤカから返ってきた答えは少々違っていた。
「じつは私、正直なところ、ほぼイカされたってことはなくって、ふりをしてるっていう……ふふふ。まあでも、けっこう何回も来てくれるお客さまだと、コツをつかんでくるらしくて、そうするとイカされちゃいましたけど、その場合も、なんかイッちゃった、って感じくらいですね」
 注釈を加えておくと、ここでの「なんかイッちゃった」との声色は、軽く舌をペロリと出すくらいのニュアンスだ。
「やっぱりイクふりをするのって、体の負担を減らすため?」
「そうですね。あと相手が喜ぶから」
 即答、である。
「それって、いつ頃身につけたの? 前の妊婦さん時代?」
「ふふふ、その頃ですねえ」
「妊婦さんのときも、お客さんのなかには、イカせようって人がいたわけだ」
「多くはないけど、いましたね」
 これまで薄々とは気づいていたけれど、世の中には限りなくインモラルな欲望が潜んでいることを、実感させられる。

べつに犯罪をしてるわけじゃないけど

ここで私は質問を変えた。
「あの、ところでこの春先までやっていた、風俗での仕事の時間については、いまの旦那さんにはなんて説明してたの?」
「派遣に行ってると話してました」
「派遣とは?」
「派遣の仕事には、これまでいろいろ行ってたんで、事務やったりとかって、適当に言ってました」
「罪悪感はあった?」
「多少はありましたね。とくに嘘の仕事の話をしてるとき。それとか、子供と遊んでるのを見てるときとか……」
「そういうときに、どういうふうに思うの?」
「なんか、ちょっと、べつに犯罪をしてるわけじゃないんですけど、風俗だしなぁって思います」
「だけどやっぱり仕方ないって思いは?」
「おカネ稼ぎたいって思いはありますね」
 やはり、そこでどれほどの金額を手にすることができるのかを、“知ってしまった”ということは大きいのだろう。禁止薬物とまでは言わないが、関係をきっぱりと断ち切るのは、並大抵のことではないと思う。

罪悪感はありつつも、お金にはかえられない……
アヤカの経済状況が明かされる次回は11月13日(金)更新予定です。

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

週間ランキング 今読まれているホットな記事