よみタイ

小野一光「限界風俗嬢」

四人目妊娠中の人妻が語る“育児と風俗の両立”

子育てと両立できなかったスーパーの仕事

 その後の彼女の約三年間について、私はまったく情報を持っていない。そこで切り出す。
「ところで、前回の子を出産して、それ以降って風俗との接点はありました?」
「あ、ありました。産んで一年くらい経ってからかなあ……」
 私は頷く。
「ほんとコロナの騒ぎが始まるまでって感じです」
「てことは、今年の春先までってことだよね」
「そうですそうです。さすがにちょっと、コロナをもらうのは怖いんで」
「それは場所はどこで?」
「えっと、××(地名)です。そこの人妻店ですね」
 彼女が挙げたのは東京都内ではない、首都圏の歓楽街だ。
「出産から一年後くらいに思い立ったのは、なにかあったから?」
「おカネを稼ぎたいなっていう……ははっ」
 最後の笑いは明らかに照れ笑いだ。アヤカは続ける。
「ちょっとだけその前に、パートもやったんですよ。ただ子供が『調子悪くなったんで迎えに来てください』っていうのが、わりと続いちゃったんです。それで、『そういうのは、ちょっとどうかな?』って、職場の人に言われちゃって……」
「なんの仕事をやってたの?」
「スーパーの品出しのバイトですね」
 まさに、前回口にしていたことを、有言実行していたわけだ。だが、そこには子供の調子が悪くなることまでは、織り込まれていなかったということか。
「それでスーパーに居られなくなって、次に風俗の仕事をするってことに、抵抗はなかった?」
「正直、あんまりなくって……」
「あ、じゃあわりと簡単に、風俗しようってなったの?」
「パートがダメだから、でもおカネがほしいからやろうって。やっぱり、時間に制限がない、早退しても怒られないっていうのは、魅力的なんですよね」
「前は都内だったけど、今度は××を選んだのはどうして?」
「あの、デリヘルじゃなくて、今度は店舗型の店が良かったんですね。で、探したら××にあったんで、面接を受けて入ることにしたんです」
「なんで店舗型にしたの?」
「あまり出歩きたくなかったんで……」
「ああ、ホテル街とかを……」
「そうですね……ふふっ」
「それはたとえば結婚したからとか?」
「うーん、結婚したからとかではなくて、前にやってたとき、ホテル街へ向かうときに、やっぱり途中で人混みとかを通るじゃないですか。それが嫌だなあって思っていて……」
「内容はデリヘルと同じ?」
「そうそう。同じです」
 つまり、本番を除く性的サービス全般ということだ。

コロナ禍の最中でもあり、取材中もマスク姿のアヤカ 撮影:小野一光
コロナ禍の最中でもあり、取材中もマスク姿のアヤカ 撮影:小野一光

一日五~六時間で二~三万円の収入

「店にはどれくらいの割合で出てたの?」
「週に三日、四日くらいです」
「そうすると、だいたい月にどれくらいの収入になる?」
「そうですねえ、あんまり長時間は出てなかったので、一日に二、三万円ですね。月にすると三十万円いかないくらいです」
 一日の仕事時間は五、六時間だったそうだ。
「だいたい朝の十時くらいに出勤して、午後三時、四時には帰ってましたね」

 気になったことを尋ねる。
「久しぶりに復活してみて、最初にプレイしたときって、どうだった? どんな感想を持った?」
「うーーーん、そうですねえ、なんていうか、久しぶりって感じっていうか……」
「プレイで気持ち良くはなれた?」
「いや、そんなにはなんなかったですね。前と変わらないっていうか、仕事としてこなす感じです」
「前は妊婦さんだったから、体に影響はないかって心配だったと思うんだけど、その点での不安材料が消えたことによって、なにか心理的な変化とかってある?」
「そうですね。お腹に気を遣わなくていいっていう、その点では楽でしたね」
 アヤカによれば、前に働いていた都内のデリヘルと、××にある店舗型ヘルスでは、客層が違うらしい。××の方は値段の安い短時間コースがあるため、比較的若い学生などが多かったという。

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

週間ランキング 今読まれているホットな記事