よみタイ

小野一光「限界風俗嬢」

女子大生風俗嬢が悟った「卒業」のタイミング

「店にもよるんですけど、私のいま働いているガールズバーだと、グラスが二種類あって、小さいグラスだと一杯千円で提供して、バックが百円。で、大きいグラスだと、千五百円で提供して、五百円入るんですよ」
「そら大きい方にしたいよねえ」
「そうなんですよ。あと、ガールズバー(での仕事)を始めてからは、自分がキャッチが上手いっていう、自分で言うのもなんですけど、人よりできるってことに気が付いて……」
「やっぱり女の子は外で客引きしなきゃいけないんだ」
「あ、はい。それはけっこう得意な方だと思いますね」
「どういう風に誘うようにしてるの?」
「基本的には『四十分千円でやってます』、みたいな声かけなんですけど、遅い時間になると人がいないんで、個別に話しかけていって、話の途中で、『いや、多分気付いてると思うけど、お店なんだよね』とか、そういう会話に持って行くんです。客観的に結果を見ると、人がいっぱいいる早い時間帯よりも、人がまばらな夜遅い時間帯の方が(客が)取れてるんで、個別に話しかける方が得意なんだなって……」
「服装は?」
「うちの店はTシャツが決まってて、あと春から秋にかけてはショートパンツか、膝丈くらいのスカートですね。自分で用意して、店で着替えてます」

 接客だけでなく、集客にまで関与しなければならない仕事にもかかわらず、給与はかなり安いそうだ。

「時給としてガールズバーが千二百円で、スナックの方が千五百円です。大学院生だから、研究にかなり時間を回さないといけないんで、バイトの時間を増やせないんですね。だけどそうすると、いまの時給だと生活がやっていけないっていうのもあって……」

ガールズバーで生活費を稼ぐ

 アヤメは大学院に入ったのを機に、彼女曰く「母親の管理がすごいので、それが嫌で」実家を出て独り暮らしを始めていた。学費と家賃と光熱費は両親が出してくれているが、その他の生活費はバイトで捻出している。

「いまバイトでは、月にどれくらい稼いでるの?」
「減りましたよ、だいぶ。前は十万近くは稼いでましたけど、今年に入って六万くらい。で、先月分の給料は時給計算だけだと二万くらい。ははは。だから今月貰えるのは、それにバックとかも入って、せいぜい三万くらいです。だから、また同じようなガールズバーとかガールズラウンジ、クラブ、スナックなんかで、時給の高いところを探してるんですけど、面接で落とされが続いて、なんか就活みたいな状態です」

 面接で落とされる理由について、彼女は髪に薄い青色が入っていることと、自身のややふっくらとした体型を挙げた。

「けっこう髪に色が入ってるのって、嫌う店があるんです。それを理由に、面接の日に店の戸口で断られたこともありました。あと体型ですね。ダイエットしないと。メンタルの薬で太りますもん……」
 
 夜に会ったためか、恥ずかしながら、アヤメの髪に青色が入っていることに、言われるまで気付かなかった。それくらいの淡い青だ。私としては体型のくだりで出てきた、「メンタルの薬」の方が気になっていた。

精神科に通ったアヤメが告げられた、心の病とは……次回は2/14(金)更新予定です。
「SMクラブで働く女子大生アヤメ」連載第1回はこちら

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

新刊紹介

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

週間ランキング 今読まれているホットな記事