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小野一光「限界風俗嬢」
過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。
性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

キャバクラ嬢とITエンジニアのWワークをこなす、女子大生のリカ。
前回に引き続き、中学生のリカが義父から受けた性的虐待が語られます。

「あんたは何でも私のものを盗るからね――」 義父との行為に耐え続けた娘に、母が投げかけた言葉

幼い弟たちから、“お父さん”を取り上げちゃいけない

「リスカで家族会議になったあと、義父が妙に優しくなって『(傷痕を)見せてごらん。一緒に寝てあげるよ』って、添い寝をしてくるようになったんです。私は拒否って捨てられるのが怖かったから、拒めずにいると、それがだんだんひどくなってきて……」

 リカの使う言葉が「新しい父」から「義理の父」、そして「義父」へと変わる。まるで暗雲が徐々に垂れこめてくるようだ。

「酔って帰ってくると私の布団に入ってきて、下着のなかに手を入れられたり、自分のを私に触らせたりとか……。そのときはもう二人目の弟もいたんですね。私、二人の弟をすごく可愛がってたんです。で、自分が幼いときに父のいない生活をしてたでしょ。それを弟たちにも味わわせたくなくて……。声も出せず、嫌がることもできず、バレないように、バレないようにって……」
 
 十四歳の女の子にできる幼い弟たちへの精一杯の思いやりは、自分自身を深く傷つける行為と引き換えのものだった。

「やられることはだんだんエスカレートしていって、そのときは処女でしたけど、それもそこで……。たいていは義父が酔って帰ってきたときで、『中に出さないからいいだろ』みたいな。あとは顔を手で押さえつけられて舐めさせられたりとか……」

 両親の寝室は別になっており、いつも母親が寝たあとだったため、気づかれることはなかったという。ふいにリカがこちらに顔を向ける。目が合う。大人の服を着た女の子、がそこにいる。
 彼女は自分に言い聞かせるように言う。

「なにより弟たちがかわいかったから。弟たちから“お父さん”を取り上げたくない一心だったから……」

 リカに新たな交際相手が現れたのは、彼女が中三のときのことだ。

「その頃、あるオンラインゲームにハマってたんですね。そのゲームで出会った二十四歳の人と付き合うことになったんです。遠距離の人だったんですけど、彼に私が義父からやられてることを話したら、『そんな嫌なこと、恐いことは俺はしなくてもいい』と言ってくれました。それでタブレットとかでスカイプを繋ぎっぱなしにして、時間があるときに話をずっとしてて……。その時期、彼と出会って精神が安定してたと思いますね」

 相変わらず義父による理不尽な性暴力が続くなか、彼女にとっての彼は、シェルターのような存在だったのだろう。だがその安寧のときも長くは続かない。

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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