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「キャバ嬢は自由の象徴」――歌舞伎町で働く理系女子大生

過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。 性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。 そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。 ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。 前回取材した、SМクラブで働く女子大生・アヤメ。 今回はアヤメから「かなり驚くような人生を送っている」と紹介されたリカに会いに、昼の歌舞伎町へと向かう。

金髪童顔のキャバクラ嬢

〈ご連絡遅くなり大変申し訳ございません。明日でしたら予定空けることが可能かと思います〉

 日中、私のスマホにリカからの連絡が入った。アヤメに中学高校の同級生だという彼女を紹介してもらって、二週間後のことだ。
 じつはその六日前、私は彼女に取材の都合を確認するためのライン(LINE)を入れていた。それに対して、〈予定確認の後に折り返しさせていただきます〉との返信が来て以降、しばらく音沙汰がなかったのである。そのため、そろそろ取材のスケジュールを立てたいと改めてメッセージを入れたところ、それから二十分も経たないうちに返信が入ったのだった。

 日の出から営業している歌舞伎町の朝キャバ(クラ)で働いているという彼女だが、絵文字もなにもなく、簡潔な文章だ。そのことを意外に感じた。私はすぐに返事を送る。

〈そうですか。ありがとうございます。ぜひお願いいたします。何時にどこで待ち合わせましょうか。ご都合のいい場所と時間を教えて下さい〉

 すると一分後には返事が入った。
〈13:15に××ビル(本文実名)あたりでいかがでしょうか〉
 
 リカは歌舞伎町にあるビルの名前を挙げた。そこで私も返す。
〈了解です。着いたらラインしますね。よろしくお願いいたします〉
 
 翌日の昼、私が待ち合わせ予定の二十分前に新宿駅に着いたところで、リカからラインが入った。

〈今日はよろしくお願いします。おなかすいた(笑)〉

 早朝からの仕事終わりで無理もないと思い、すぐに返事を打つ。それからのやり取りは次の通りだ。

〈いま新宿駅です。着いたら連絡しますね。まずメシでもいいですよ〉
〈お酒しかいれてなくて(笑)今上がったのでビルでお待ちしてますね〉
〈了解です〉
〈黒のキャバスーツに金髪なのですぐわかるかと〉

 指定されたビルに近づくと、ラインに書かれた通りの、ストレートロングの金髪に、黒いミニスカートのスーツを着たリカが立っているのが見えた。会うのは初めてだが、説明の内容に該当する女の子は彼女しかいない。

「こんにちは、小野です」
「あ~、ど~も~。リカです。今日はよろしくお願いします」

 小顔で細身の彼女は仕事終わりの疲れを見せず、笑みを浮かべて挨拶する。身長は百六十センチメートルくらいだろうか。派手な服装に比して、透けるように色が白くて薄化粧なため、童顔であることが際立つ。なにしろ二十一歳だ。似た顔として女優の高畑充希が頭に浮かぶ。もっとも、全身から受ける印象だと、彼女がキャバ嬢役を演じた際の、との注釈が付くが。

リカにとって、「キャバクラといえば歌舞伎町」だという。   撮影/小野一光
リカにとって、「キャバクラといえば歌舞伎町」だという。   撮影/小野一光
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新刊紹介

小野一光

おの・いっこう
1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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