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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

「政策と人材のオリンピック・パラリンピック」東京都知事選挙で印象に残った演説

印象に残った中野駅北口での演説。西本誠はこれからも選挙に出続けるつもりだ。(撮影/畠山理仁)
印象に残った中野駅北口での演説。西本誠はこれからも選挙に出続けるつもりだ。(撮影/畠山理仁)

中野駅北口での西本の演説は忘れられないものだった

 西本の外見と演説のギャップに人々は驚いて足を止めた。ところどころ言葉に詰まる彼の素朴な語り口に、次はどんな言葉が飛び出すのかと注目した。

 この都知事選で忘れられない演説がある。それは中野駅北口での演説だ。西本は白い特攻服姿で白い手袋をし、黒塗りのベンツの前でマイクを握って静かに語りかけた。
「『オリンピックで一番覚えてるの何?』って言われた時、僕が思い出すのは日本人じゃないんです。ある外国の国で、泳いだこともないのにオリンピックに出された選手のことを唯一覚えているんです」

 聴衆は立ち止まって次の言葉を待つ。

「バカじゃないのかって、最初思ったんです。その国にプールもないし。バカか、みたいな。でも、その人は初めて……。練習は25mプールでしかできていないけど、オリンピックで100m泳ぎきった。その時に、金メダル取った時よりも周りの人が『ウォーッ』てなってて……。最初はバカにしてたのに……」

 西本は絞り出すように言葉を続けた。

「自分も絶対、『あの時、あいつはああ言ってたよな』とか『学歴ないけどちゃんとやってるな』と言われる人になりたい」

 西本はこれからも選挙に出続けるつもりだという。
 最初の選挙での得票は11,887票。西本の初めての「オリンピック」は22名中10位という結果に終わった。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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