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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

田中けん(42才)vs田中けん(54才)! 候補者顔写真取り違え! 投票率は約20%の大幅減少! 静岡4区補欠選挙は私たちに何を教えてくれたのか

まさかの候補者顔写真取り違え!

無所属で立候補していた山口けんぞう候補には、まさかの事態が!(撮影/畠山理仁)
無所属で立候補していた山口けんぞう候補には、まさかの事態が!(撮影/畠山理仁)

 ここまで述べてきたことは、他のメディアでもある程度報じられてきたことだろう。しかし、ここから先をボリュームたっぷりに報じるメディアは少ないはずだ。

 今回の選挙には、無所属の山口けんぞう候補も立候補していた。私はいつもの選挙取材と同じように、全候補者に連絡を取った。もちろん、山口候補の選挙運動も取材している。
 開票日をどのように過ごしますか、と山口候補に聞くと、「ずっと家でテレビを見ていると思います」との答えが返ってきた。
 それに続いて、私は山口候補の口から驚くべき事実を知らされた。

「ちょっとひどいことが起きてるんです。25日付けの産経新聞が候補者4人の顔写真を載せたんだけど、私のところに別人の写真を載せちゃったんだよ」

 えええええ!
 別人の写真?
 候補者がみんなマスクをしているから「顔の見えない選挙戦」ではあるが、まさか「別の顔」が新聞に載るとは!

「私も何年か選挙を見てきたけど、こんなの初めてじゃないの! 支局の女の子からは電話で一本お詫びがあったけど、謝罪に来たりはしていない。私の街頭演説の場に来るって言ってたんだけど、来なかった。
 投票日の26日付紙面には正しい写真を載せて、隣にお詫びを掲載していたけど、違う人の写真載せてからじゃ意味ないだよね」

 間違いは誰にでもある。私も間違えたことがある。しかし、これはちょっと大変な間違いだ。

「私が当選すれば問題ないけどもね。縁起を壊された感じがするよね。今日は日曜日だから明日本社に電話するけれども、返事が良くなければ裁判も考えている。
 だってさ、もし、自民党のふかざわさんが写真を間違えられていたとしたら、大変なことになるでしょう。私だって、供託金の300万円が返ってこないと困るんですよ」

 開票日の夜10時に山口候補の自宅を訪ねると、深夜にも関わらず実際の紙面を見せてくれた。本当に間違っている。これは間違って写真を載せられた人も困るのではないだろうか。

 ちなみに山口候補の政策は、「SDGs(エスディージーズ/持続可能な開発目標」、「ノアの方舟構想」(大型クルーズ船に区役所機能、病院機能、ホテル機能をもたせて災害時には海外の被災地にも派遣する)、「『そ・わ・か』の実践」だ。
 「そ・わ・か」とは、掃除、笑い、感謝のことだという。
 自宅にお邪魔すると、山口候補は掃除の行き届いたお宅の居間でこたつに入り、新型コロナウイルスで亡くなった岡江久美子さんの追悼特番を観ていた。
 いきなり政策の「SDGs」からエネルギーの話になり、深夜にもかかわらずホンダの発電機(カセットボンベでエンジンが動く)を実際に動かしてくれた。

「深夜なので、もう大丈夫です!」

 私がそう言っても、政策に対する思いが止まらず、エンジン全開だった。
 話の節々に笑いもある。

「ここまで来て話を聞いてくれたのはあなただけだ。ありがとう」

 そう言って、何度も感謝の言葉を口にした。「そ・わ・か」が全部揃った。山口候補からは本気で政策を実行しようという気概が伝わってきた。

* * *
 民主主義の根幹である選挙は、新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも行なわれる。
 それは私が4月17日の安倍晋三内閣総理大臣記者会見で質問し、確認したとおりだ。

「選挙は不要不急の外出には当たらない」

 だから投票所や開票所では、できる限りの感染防止策が講じられている。
 静岡県選管は、全投票所に使い捨ての手袋を設置した。投票所の入り口に消毒液を配置し、投票所の換気、鉛筆の消毒、筆記用具の持ち込みの許可、透明なシートでの仕切り、マスクを着用して距離も確保できるように配慮した。
 バスに投票箱を積み、移動して期日前投票を行える「移動投票所」も走らせた。
 そこまでしても行なわなければならないほど、選挙は大切なものなのだ。
 新型コロナウイルスが感染拡大を続ける中で行なわれる選挙は、多くの課題を浮き彫りにした。
 私たちは、もっと真剣に選挙に向き合うべきではないだろうか。

【衆議院議員小選挙区選出議員補欠選挙(静岡第4区)選挙結果(立候補届出順)】
無所属 山口けんぞう(72才) 1,887票
無所属 田中けん(42才) 38,566.398票
自民党 ふかざわ陽一(43才) 66,881票 当選
N国党  田中けん(54才) 1,747.595票

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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