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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

田中けん(42才)vs田中けん(54才)! 候補者顔写真取り違え! 投票率は約20%の大幅減少! 静岡4区補欠選挙は私たちに何を教えてくれたのか

ふかざわ候補の選挙事務所。通常の選挙の有力候補事務所とは大違い。これが緊急事態宣言下の選挙のリアルだ。(撮影/畠山理仁)
ふかざわ候補の選挙事務所。通常の選挙の有力候補事務所とは大違い。これが緊急事態宣言下の選挙のリアルだ。(撮影/畠山理仁)

人との接触が減ることの弊害

 この選挙は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下で行なわれた初めての国政選挙である。ふかざわ候補は選挙中、「集会はしない。握手はしない。マスクは外さない」という従来の選挙戦とは大きく異なる戦い方を余儀なくされていた。
 選挙期間中に選挙区内で行った街頭演説は155回以上。しかし、密集を避けるため、あらかじめ場所を公表することはしなかった。選挙前に企画していたミニ集会や屋内での個人演説会もすべてキャンセル。街頭演説の場所選びも異例だった。

「なるべく人がいないところを探してやります。変な話ですけど」(深沢事務所)

 人に伝えるための選挙なのに、人を避ける。各地で演説する姿をインターネットで配信することで有権者に訴えるしかなかったのだ。
 たしかに、感染拡大を防ぐためには仕方がない。しかし、「人との接触」を減らしたことで、大きな弊害もあったと私は思う。

 今回の選挙は、衆議院選挙では初めて野党統一候補が実現した選挙だ。そのため、本格的な与野党激突となり、当初は安倍政権への評価も大きな争点と見られていた。
 ところが、ふかざわ候補は当選後の共同インタビューで、こう答えているのだ。

「今回の選挙戦において、安倍総理に対しての批判的な言葉が私に寄せられたことはほとんどなかった」

 これを聞いて驚く人もいるのではないか。ふかざわ候補は、続けてこう答えている。

「私は望月義夫先生の後任として活動していましたし、新型コロナの影響で不特定多数の皆さんに会えたわけではないので、直接、私には届かなかったのかなと。しかし、(安倍政権の)反省すべきことは反省して、説明が必要なところは説明していく。そのことは与党であっても、やはり求めていきたい」

 私は思わず挙手して質問した。ふかざわ候補が具体的にどこを反省すべきと考えているのかを知りたかったからだ。

「やはり国会やマスコミでもいろいろ話題になっているようなこと。世論の中でみなさんが不満に思っていることは反省していくべきだと思います。それぞれお考えだと思いますので、そこはみなさんの一般的なところで捉えていただければと思います」

 私はさらに聞いた。深沢候補が安倍政権に一番ここは反省してもらいたい、というところはどこなか、と。

「私自身では……、うーん、なんでしょうね。まあ、特に、それ一つ、というのは、特には今はないです」

 選挙は有権者と候補者が触れ合うことで、政治家を育てていく大切な機会だ。その機会が新型コロナウイルスによって奪われているのではないかと私は感じる。
 有権者との接触機会の減少は、これからすべての有権者の代表として活動する候補者にとって、不幸な事態だったに違いない。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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