2025.4.9
驚きの料理の作り方
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以前はひとりで料理の作り方を学ぶ方法は、テレビ、新聞、本くらいのものだったが、料理のレシピサイトが立ち上がってから、それを利用する人がとても増えた。私はほとんど見ないが、周囲では参考にしている人が多かった。しかし料理好き、料理上手の人で参考にしている人が皆無だったのは面白かった。そういう人はレシピを投稿する側で、検索する側ではなかったのだろう。
SNSが発達してからは、レシピサイトにも陰りが出てきたらしい。利用するには短時間で要点を凝縮した動画が便利なようだ。私はSNSで料理の作り方を検索したことはないのだが、とても料理の上手な少年、少女たちがいて、彼らの動画が流れてくれば観る。どの子もとても丁寧にきちんと料理を作っていて、
「私もこの子たちの爪の垢でも煎じて飲まなければ」
と反省したりもする。こういう料理の動画は観ていても楽しい。
あるとき、とても簡単ないとこ煮の作り方という動画が流れてきた。いとこ煮というのは、地方によってはいろいろとあるようだが、私はいとこ煮と聞くと、かぼちゃと小豆を煮たもの(味噌味ではない)をまず思い出す。名前の由来もまちまちなのだが、野菜を火の通りにくいものから「追々(順を追って)」煮るので、その追いを甥とかけ、甥と甥はいとこなので、いとこ煮という名前がついたとか、両方とも野菜なので、いとこみたいな関係だからとか、様々あるようだ。
そうなると畑に生る野菜同士を煮たら、全部いとこ煮になってしまうわけだが、かぼちゃと小豆に限るわけではなく、芋やコンニャクなども含めた野菜を味噌で煮たものを、そう呼ぶ地方もあるようだ。
で、そのかぼちゃと小豆のいとこ煮なのだが、私も何度か作ったことがある。といってもそのときは、自分で煮たごく薄く塩味を付けた小豆があり、かぼちゃだけを煮て、それとドッキングさせたので、追々煮たわけではない。最初から作ろうと思ったら、小豆とかぼちゃを追々煮るのに時間がかかる料理なのは間違いない。
そのとても簡単ないとこ煮にの作り方とは、いったいどういうものだろうかと動画を観ていたら、鍋にかぼちゃを入れたところに、なんとあずきバーを入れて、それでおしまいというすごさだった。
「えっ……」
あまりにびっくりして二度、三度と繰り返し観てしまったが、間違いなかった。量としてはかぼちゃが四分の一個に、あずきバーが二本。あずきバーには相当な量の砂糖が含まれているから、それを二本入れるなんて、相当に甘いのではないかと気になった。うちには砂糖はなく、みりんもほとんど使わないので、かぼちゃ四分の一個にあずきバー二本というのは、相当な破壊力だった。
たとえばかぼちゃの煮物が四分の一量あって、それと同時にあずきバーを二本食べられるかといったら、多くの人は無理ではないかと思う。しかしこの時短料理では、同じことをやっているわけである。もちろん私は糖分の量が恐ろしくて、試さなかった。これは絶対にまた料理上手の友だちに報告しなければと、この話をしたら、
「はああ~?」
と目を丸くして絶句していた。
そしてつい最近観たのは、コンビニのおにぎり特集だった。コンビニの商品は日々進化していて、消費者の細かいニーズに応えているらしい。コンビニでおにぎりが売られはじめた頃だから相当前になるが、試しに買ってみたことがある。三角形にはなっているが御飯は圧縮されていて、妙な匂いがあり、海苔のぱりぱり状態を保つための、複雑な包装をはずすのにも苦労した。緊急のときでなければ買わないだろうと思った。
その後、いろいろと改善されて、御飯はふんわり、具の種類も増え、海苔もぱりぱり派、しっとり派と分けて売られているようだ。それはそれでいいのだが、コンビニの明太子やたらこおにぎりのアレンジレシピとして、炒飯が紹介されていた。どうするかというと、溶き卵の中に海苔を取ったおにぎりを一個投入して、ぐちゃぐちゃに崩す。すごい絵面である。それをバター、おろしにんにくで炒め、上に海苔をまぶすというものだった。炒飯を食べたくても御飯がない場合、コンビニでおにぎりを買ってくればすぐに作れるといっていた。味付けもする必要がない。たしかにそうかもしれないが、私としては、うーんとうなるしかない。手軽だし作りたいという人には、どうぞというけれど、どうも抵抗がある。作る過程のこととはいえ、昨今は食べ物をぐちゃぐちゃにして見苦しい状態になっても、平気な人が増えたのだろうかと、複雑な思いがわいてくるのだった。
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次回は5月14日(水)公開予定です。
