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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

スケボーをやればよかったと、後悔しながら死ぬのはイヤだから

子供の頃にもっといっぱい練習して、ものにしておけばよかったと悔やまれるのがスケートボードだ。

1969年生まれの僕が小学生の頃、スケボーが少しずつ流行ってきた。
いまにして思えば、ときは1970年代後半〜1980年代初頭。アメリカ・カリフォルニアのヴェニスビーチでZ-BOYSというスケートチームの人気が高まり、アメリカ中でスケボーが流行しはじめた頃。

感度の高い友達は、その最先端の情報をなんらかの形でキャッチし、スケボーに乗りはじめたのかもしれない。
僕も友達のH君から何度か借りて遊んだが、流行なんてまったく感知していなかったのですぐに飽きてしまった。

それから数年を経た1980年代中頃の高校〜大学時代。
雑誌の記事で、アメリカ西海岸に再びスケートボード流行の大波が来ていることを知った。
しかも今度のブームは、USハードコアやスラッシュメタルなど僕が好きなラウド系ロックと関係が深く、ボードもファッションもかなりかっこいいものになっている。

でも当時の僕はどちらかというとバイクや自動車に興味が向いていて、スケボーなんてと馬鹿にする感覚が強かった。
それゆえにやはり敬遠してしまったが、せめてあのとき素直にブームに乗っていれば良かったと思っている。

初心者のおじさんでも乗りやすいのはミニクルーザータイプ

社会人になった1990年代も、スケボー人気は拡大していった。
もはや一過性のブームではなく、アメリカ由来の新しいライフスタイルとして定着しつつあったのだ。
僕が編集していた若い男性向けストリートファッション誌のモデルにも、スケボーライフを送る子が大勢いた。
でも、こっちはもうすっかり大人。
「いいなあ、楽しそうだなあ」と思いつつ、今さらやるのは気恥ずかしいのでやっぱり指をくわえて見ているだけだった。

2000年代になると、スケボーに夢中だったXスポーツ好きの間で、にわかにピストバイクがブームになる。
僕は雑誌の編集長を務める30代のおっさんになっていたが、このブームばかりは乗っておこうと思い、自分でもピストバイクを購入して乗るようになった。
こうなると、歯止めが効かない。
40歳になる頃、遅ればせながらいよいよスケートボードにも手を出すかと思うようになったのだ。

奇しくも2010年代前半、新しいスケートボードがブームになりはじめていた。
1970年代に販売されていたものにそっくりな見た目のミニクルーザーである。
ミニクルーザーはデッキがプラスチック製、車輪はウレタン製のため走行音が小さく、初心者でも扱いやすい。
飛んだり跳ねたりというトリックを追求する通常のスケボーとは違い、ゆっくりクルージングするのに最適で、2013年以降は学生を中心に男性も女性も巻き込む世界的なブームとなった。

その頃の僕は44歳。4歳の子供を持つお父さんになっていたが、このブームにも乗っかって、BANANA BOARDというメーカーのミニクルーザーを購入した。
そして昨年、子供も小学生高学年になったので、ミニクルーザーの代表的メーカーであるPennyのスケボーを買ってあげた。
今では親子でよく一緒に滑っているのだ。

娘よ。スケートボードはいいぞ。
父のように大人になってから慌ててやるのではなく、今からしっかり練習しておきなさい。
なんて言わなくても子供の身体能力は高く、ヨロヨロと危なっかしく乗る僕の横を、楽しそうにスイスイ滑っていく。
いいなあ、うらやましい。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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