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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

五輪開催中の別世界に思いを馳せ、犬に公式ウェアを着させる

しょうがないとわかっていながら、つい考えてしまうのは、「今頃は宴の真っ最中だったはずなのにな」ということだ。

先日、仕事で浅草に行ったら、その閑散っぷりに衝撃を受けた。
外国人が誰もいないと、雷門前も仲見世も浅草寺も、こんなに寂しいんだ。
人力車の人が暇そうに時間をつぶし、店の人が必死に客引きをしていた。
本当だったら今頃は、世界中からのお客さんへの対応でおおわらわだっただろう。

小6の時に読んだ「藤子・F・不二雄異色短編集」の中の“パラレル同窓会”という話で、パラレルワールドの概念を初めて知った。
パラレルワールドとは、ある世界から分岐し、それに並行して存在する別世界のこと。この現実とは別に存在する、いくつもの現実がパラレルワールドだ。
並行世界、並行宇宙、並行時空とも呼ばれるパラレルワールドは、概念上だけのものではなく、物理学の世界では理論的な可能性が語られている。
だが、パラレルワールドを我々が観測することは不可能で、その存在を否定することも肯定することもできない。
以上、ウィキペディアの「パラレルワールド」の項をカンニングしながら端折って書いたので、詳しく知りたい方はウィキペディアへどうぞ。

もしも今年1月の時点で分岐し、コロナが拡大しなかったパラレルワールドが存在するなら、今頃の僕はどんなふうに盛り上がっていただろうか。
まず、我が家のテレビが新しくなっているはずだ。
かれこれ20年前に買い、DVDデッキのチューナーを経由させることで地デジ化の買い替えビッグウェーブもスルーした我が家のテレビ。
さすがにもう買い替えようと考えているのだが、どうせならオリンピック直前に、そのときの最新鋭機を買おうと目論んでいた。
そしてオリンピックの延期とともに、テレビの買い替えも延期になっている。

幻の東京オリンピックになるかもしれないから歴史の証拠品を買おう

僕は相当のアホなので、オリンピック公式グッズもたくさん買っていただろう。
延期が決まる前からいろいろなグッズが発売されていたが、こういうものは直前の盛り上がった気持ちのときに、我を忘れて買うのが一番。
そう思っていたので、何も買っていない。

でも先日、近所のホームセンターのオリンピックコーナーを眺めていたら、今こそ何か買うべきタイミングじゃないかという気がしてきた。

だって最近の世界での感染拡大状況から冷静に考えれば、本当に来年オリンピックが開かれるかどうか、だいぶ怪しくなっていることがわかる。
もちろん予定通りつつがなく開催されるならそれが一番だけど、可能性は限りなく低くなっていると思う。
だったら、“幻の東京オリンピック”という歴史の証拠品を、何かひとつ買っておいてもいいんじゃないかと思ったのだ。

でも、デカデカと「TOKYO 2020」とプリントされたTシャツなど買う気にならない。どうせ着ないだろうし。
バッジ、帽子、扇子、マグカップ、タオル、サングラス……。
その他のグッズにも食指が動かない。
前から気づいていたが、どうもセンスがイマイチなんだよね。

そうしてようやく「これは」と思ったグッズ。それは犬用ウェアだった。
吸水・速乾性の高い機能性生地を使い、濡らした状態で着ると気化熱でずっと冷感が保てる、熱中症対策グッズだ。
東京五輪の公式キャラクター「ミライトワ」のイラストがプリントされている。

我が家のワンコに着せてみると、なかなか似合うので嬉しくなってきた。
これを着せて散歩していると、すれ違う人からの注目度も高い。
オリンピックの延期を知らず、張り切っているアホの子みたいで可愛いのだ。

しかしまあ本当に、どうなるんでしょうかね。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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