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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ナヨナヨ感がぬぐえないキャンバストートって実はタフな男の道具なのだ

キャンバス地のトートバッグがどうも苦手だ。
だってあれ、ママさんたちがオムツやミルクなどの子育てグッズを入れたり、ママチャリで近所のスーパーへ買い物に行ったりするときに使うバッグというイメージがないだろうか?

僕のような50を過ぎたおっちゃんが持つのはちょっと恥ずかしい。
……と言いつつ、実は僕もひとつ、生成りのキャンバストートバッグを持っている。
しかも気に入っていて、特にこれからの夏シーズンには、毎年、割と高い頻度で出動させる。

KCP(Keystone Canvas products)というブランドの、Made in USAのやや大きめなトートバッグだ。
キャンバストートといえばL.L.Beanのものが有名だが、このKCPは1912年創業のL.L.Beanよりも古い1907年にアメリカ・メイン州で設立された会社(ただし資料によっては、“ペンシルベニア州で設立”となっていてよくわからん)。

洗いをかけたヘビーウェイトコットンキャンバス生地を、太い番手のロウ漬け糸でザクザク縫って仕立てあげられていて、その無骨な風情がなかなかかっこいい。

かつてジョン・F・ケネディも愛用した古き良きアメリカンなトートバッグ

KCPのトートバッグは“ビーントートさながらの本格派”と称されることもあるけど、実は逆で、世界的に信頼度が高いL.L.Beanのトートバッグの印象は、このKCPがつくったものなのだ。
というのも、KCPはいわゆるファクトリーブランド。
様々なブランドのバッグ製造を受注していて、1970~80年代にはL.L.BeanのトートバッグもOEM生産していた。
現在のビーントートはすでに自社生産になっているが、当時のKCPの社長みずからが数台のミシンをL.L.Beanに持ち込んで伝授した製法が基礎になっているのだとか。

KCPトートのデザインは、同社の現社長の祖母が「自分が使いやすいように」ということで手作りしたバッグをそのまま商品化したもの。
古き良きアメリカンな風情で、かつてジョン・F・ケネディが大統領在任中、ホワイトハウスから注文して愛用していたという逸話も残されている。

もともと氷の運搬に使う用途で誕生したキャンバストートは、実はタフな男の道具。
特に、現在は海軍や図書館、銀行の現金輸送用バッグなどとしても使われるKCPトートは、決してママバッグではないのです!

そうやって蘊蓄うんちくをこねくり回して自分を納得させても、やっぱりキャンバストートはちょっとナヨナヨした感じで気恥ずかしい。
どうしてもそう思ってしまう僕は、KCPトートを持って町はうろつかない。
ゴルフのときや1〜2泊程度の小旅行のとき、着替えなどの荷物を入れて運び、車のトランクやロッカールームにボーンと放り込んでおくバッグとして活用しているのです。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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