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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

アメリカと日本のナンバー1自然保護団体がつくるロングセラー商品

バードコールなんて滅多に使う機会はないけど、なぜか持っていないと落ち着かないもの。
そんなことない? 
いや、僕はそうなので強引に話を進めます。
小さなバードコールは紛失しやすい。最近買った僕のこいつも、通算何代目になるのだろうか。

最初にバードコールを買ったのは、高校生の頃だった。
たまたま立ち寄った吉祥寺のアウトドアショップで見つけた。
「なんだこりゃ?」と思い、説明書き通りに金属のつまみを赤い木の部分に擦りつけるように回してみたら、鳥そっくりの音が出てびっくり。即買いした。
“AUDUBON BIRD CALL”という刻印がされたそれは、クラシカルな佇まいが素敵でお気に入りになった。

それ以来、なくすたびに同じものを買い求めた。
AUDUBONのバードコールは、日本全国どこのアウトドアショップでも売られている。
他のメーカーのものもあるけど、やっぱりAUDUBONのバードコールが一番かっこいい。
革紐で首からぶら下げたらちょっとしたアクセサリーのようだし、思い立ったらすぐに鳥を呼べて便利だ。

長年の付き合いだったのに、製造元については何も知らなかった。
今回、せっかくだから謎のまま放置していたAUDUBONについて調べてみたら、全米オーデュボン協会という、1905年に設立された野鳥を中心とする自然保護団体の世界的老舗だということが分かった。
このバードコールは、1947年から製造されている由緒正しき品だった。

フジロックといえば、日本野鳥の会製の折り畳み長靴が欠かせない

そうかそうかと納得した僕は、あるモノのことを思い出した。
全米オーデュボン協会と似た性質を持つ、国内一の自然保護団体といえば日本野鳥の会。
そこからも、人気のオリジナル商品が出ているではないか。
一部の人の間ではすごく有名な、バードウォッチング用長靴だ。
クルクルっと巻いてコンパクトに収納できるので、雨が心配な季節の旅行のお供として、バッグの中や車のトランクに放り込んでおけば安心。
本当に便利な品なのだ。

僕が買ったのは、2000年代の初め頃だった。
その頃は毎年のようにフジロックフェスティバルに行っていたんだけど、ある年からこの長靴を履いている人を見かけるようになり、口コミであっという間に流行した。

苗場スキー場で開催されるフジロックは、天気が急変することで有名。
それはそれで野外フェスの醍醐味なので、皆それぞれに対策を練って参加するのがお約束だが、この折り畳み式長靴は、フジロックに最適な品だった。
今でも人気で、ロングセラーとなっているはずだ。

全米オーデュボン協会のバードコールと日本野鳥の会の折り畳み長靴。
ともに非営利団体がつくったものだから、余計な装飾のない実用本位のシンプルさが逆にカッコよく感じられるのだろう。
こういうエッセンシャルなアイテムは、100年後も変わらぬ形で在り続けてほしいものだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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