2020.10.1
鮨道にゴールはなし! いま最も輝いているお鮨たちに、舌が歓喜の舞を踊り出す〜鮨 龍次郎
でもお魚はひと仕事しないと本当のおいしさが出ないって言いますよね?
「6月に入った北海道の鮪は口に入れた瞬間、うまい! って思ったほど。そんなすごい鮪は熟成させてしまうと臭みが出てしまいます。自分は熟成に使う魚自体を決めていて、流れに合えばそれを1貫か2貫だけ組み込むことにしています。だからその魚が入らない時は熟成させたものは出しません」と。
龍次郎さんの場合は魚をどういう風に食べさせたいかであって、そのイメージに合わなければどんな高級魚でも賄い行きってことです。
中学生で人生決めちゃうし、奥さまも20代で出逢ってからひとすじで結婚まで猛進していることを鑑みると、龍次郎さんって初志貫徹、一本気の人なのね。
「はい、直感で決めちゃいます、ガハハ」ですって。
良いお店はおいしいだけじゃない、流れている空気も良いもの。
付け場にいる龍次郎さんは目と耳が360度に付いているのではないかと思うくらい、よく気がつくのです。
お客さまの求めているもの、裏方の動きなど、全方向からキャッチする能力が高い。
営業中にお弟子さんを注意することもあるけど、それは決して雰囲気を悪くせず、むしろ厳しい世界なのだと理解できる叱り方。
それに「ミシュランも獲りたいです。若い子たちにとって星付きの店で働いていることって励みになりますから」と。
素材を最大級に活かすための仕込みは嘘をつかない。
だから手抜きも妥協も一切しない。
最良の酢飯に最良の鮨ダネがあり、丁寧な仕込みと切り付けの技術があったとしても“おいしい”は人によって違います。
それでも10人中8人、9人、10人が好きだと言ってもらえるようなお鮨屋を目指していきたいと、龍次郎さんは語ります。
いつかは奥さまとふたりで、お好みで食べられる小さなお鮨屋さんをやりたいそう。
時間も自由でお客さまと話しながら食べたいものを食べたいだけ食べられるお店。
その夢のために今は全力で走り続けたいと話す龍次郎さん。
行くたびにとれる予約の間隔が開いていくのは悲しいけれど、それだけ魅力にあふれるお店だから致し方ないと思えるのです。