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鎌倉育ちの作家・甘糟りり子が通い続ける名店たち~読むだけで鎌倉の味に浸れるとっておきの5店

ちょうど今頃、6月から7月にかけては鎌倉の初夏を彩るあじさいのベストシーズン。
例年なら、梅雨の合間をぬって、家族や友人と鎌倉歩きを楽しみにしていた方も多いはず。
でも今年は、新型コロナウイルスの影響で、なかなか気軽に観光地へお出かけ、というわけにはいきません。

そんな今だからこそ、読書で鎌倉散策、いかがでしょうか。
「鎌倉だから、おいしい。」は、鎌倉で生まれ育った作家の甘糟りり子さんがこよなく愛する珠玉の美味を語るエッセイ集。
鎌倉育ちだから、鎌倉で今も暮らすからこそ知り得た、当地の魅力やおいしさが詰まった1冊です。
グルメガイドとはまた違う、どこかクールな視点とリアルな文章を読めば、阿部伸二さんによる美しく精緻なイラストもあいまって、まるで実際に鎌倉を訪れているかのような気分に。

今回はそんなエッセイ集で紹介されたお店の中から、特に鎌倉ならではの風情を感じられる5店をピックアップ。一部、著者自ら撮影した写真とともにご紹介します。

(構成・文/よみタイ編集部)

アンティーク雑貨との出会いも楽しみな由比ヶ浜のイタリアン

まずは、由比ヶ浜通りのイタリアン「オルトレヴィーノ」。
鎌倉出身のシェフと三浦出身のマダムのご夫婦で営まれているエノガストロノミアです。エノはエノテカ(ワインを取り扱う店)のこと。ワインやチーズ、オリーブオイルなどの食材がそろい、奥はイートインのスペースになっています。

「東京からの友人には、なるべく私の理想とする『鎌倉』を味わってもらいたい。落ち着いているけれど風通しが良く、押し付けがましくない個性がきちんとあって、非日常ではなく暮らしに溶け込んでいる、大切な友人はそういう空間に連れていきたい。」

そう考える甘糟さんが、鎌倉に遊びにきた食通の友人たち迎える際にも利用しているお店なんだとか。

書籍『鎌倉だから、おいしい。』は、阿部伸二さんによる版画タッチの繊細なイラストも大きな魅力(イラスト/阿部伸二)。
書籍『鎌倉だから、おいしい。』は、阿部伸二さんによる版画タッチの繊細なイラストも大きな魅力(イラスト/阿部伸二)。

こちらでは、その日の朝に打つ生パスタや、ローズマリーのブリュレなど、食べたいメニューを挙げはじめたらキリがありませんが、中でも見逃せないのがレバーステーキです。
美食家・甘糟さんをして「人生で食べた『牛』の中で一番おいしかった」と言わしめた一品。年に何度か不定期で山口県の農家から無角牛が届いた時にだけ提供されるメニューだそうです。

これが「人生で食べた『牛』の中で一番おいしかった」レバーステーキの実物!
これが「人生で食べた『牛』の中で一番おいしかった」レバーステーキの実物!

こちらでは、食べ物だけでなく、食器やカトラリー、家具などのショッピングも楽しむことができます。年に数回、マダムがトスカーナで買い付けてくるイタリアのアンティーク雑貨たち。ほとんどが1700〜1800年代のものだそうです。

食もアンティークも、一期一会の出会いが待っています。

多くの文化人に愛されてきた老舗天ぷら店

小町通りは鎌倉きっての観光名所。
お土産やさんや飲食店が並び、町歩きを楽しむ人たちで賑わっています。

今ほど観光客で賑わう前、鎌倉には、その静かで落ち着いた風土を好んで、芥川龍之介や川端康成など、多くの文人が集まりました。彼ら「鎌倉文士」たちは鎌倉で蕎麦屋や寿司屋、飲み屋などのいきつけの店に通いつつ、名作を世に送り出したのです。

そんな歴史の名残を感じられるお店が、小町通りに残っています。
それが昭和33年創業の「天ぷら ひろみ」。

「ひろみ」の天丼がなければ生まれていない作品があったかも……?(イラスト/阿部伸二)。
「ひろみ」の天丼がなければ生まれていない作品があったかも……?(イラスト/阿部伸二)。

鎌倉文士をはじめ、多くの文化人に愛されてきた名店。常連だった文化人のお気に入りメニューも残っています。
「小林丼」は文芸評論家の小林秀雄が昼時に好んで食べた天丼。タネはかき揚げ、穴子、メゴチと、野菜は一切入っていません。
かき揚げ、車海老、白身魚、野菜がのった「小津丼」は、映画監督の小津安二郎の好物。

「小津監督は一人で来ると天つゆのかかったタネを肴に熱燗を飲み続け、最後につゆの染みたご飯で〆たそうだ。
こんなエピソードを二代目の女将から聞きながら、食べるのが楽しい。言葉や映画でしか知らない人たちの生活を垣間見た気がする。」

と、甘糟さんは綴ります。

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