2019.7.4
神楽坂芸者の元置屋で1ヶ月に3日間だけ営業する極上フレンチ〜MAISON DE TSUYUKI〜
知り合ったのはヒョンなことから。
突然2人で旅行することになったのだけど、何より食べ物の趣味が似ていたので楽しさが倍増したのだそう。
「千砂さんがパリに来た時の食べっぷりが私と似ていたのよ。だからこの人、絶対良い人だって思って信頼できたわね」と言うのは花野さん。
プライベートでおふたりとお食事させていただいてますが、大の肉好きでよく食べるところがそっくり!
「6年前までは遠距離恋愛だったわね」と冗談を言いながら尊敬し合うおふたりの運命的な出逢いが、MAISON DE TSUYUKIに結びつきました。
そもそも村上さんは大手企業の依頼で国内外での商品開発に携わり、花野さんはパリで初の和食ケータラー(ケータリングすべてをコーディネートする人)です。
ここで何かやらないかと言われた村上さんは、会社の迎賓館にでもしようかと考えていたところ、偶然にも花野さんが日本に拠点を移していたので一緒に仕事をすることに。
迎賓館なら食事を提供しなければ、と厨房設備を整え、空いている日は貸切レストランにしようとしたら、内容がわからないと予約を入らられないと言われ、それなら3日間だけ営業してみようかと始めました。
たった3日でしょ、と言う人もいるけれど、この3日に全精力を注ぎスパッと潔く終わる、そんな2人の料理人生はとても素敵だなと思います。
初めて訪れた時のあのワクワク感は忘れられないし、その気持ちは今も変わらない。
おふたりがこのライフスタイルを心から楽しんでいて、私たちにもそれが伝わるからだと思うのです。
「儲けなきゃとか、目標を持たなきゃとか、縛ることをせず運命に導かれるままに、目の前の出来事にベストを尽くしてきただけ。まだまだです」とおっしゃいますが、かつては毎月取れていた予約は、今はいつ取れることやら……という状況が、どれだけすごいお店なのかを物語っています。
そしておふたりの料理を最大限に活かした演出をしてくれるのがこの空間。
70年ほど前は政財界の皆さまが通う料亭「露木」であり、神楽坂芸者さんの置屋でもありました。古いけれど細部まで手入れが行き届き、本当にどこを撮っても絵になるのです。
ここは大人の社交場。
隣り合わせた人たちが、この料理と空間、そして心温まるサービスに気がつくと親しくなり、時には料理をシェアする(ひと皿がボリューミーなので4人でシェアがちょうどいい)光景さえみられる本当に素敵なお店なのです。
そうそう、お料理がひと段落するとチーズ売りさんがチーズを売りに来るのでお忘れなく。