2019.6.13
胃も心も鷲掴みにされるセンス抜群・革新的フレンチ〜クラフタル
料理の完成図って絵に描くの?って訊くと「しないです」と。
じゃ、ダイスカットにしようと思ったのは? 「イカを切った時点で。あ、茄子は最初皮付きだったのですが、味も入らないし口に残るなと思って剥きました」と。
キャビアから塩味を感じてからイカのうまみが広がってくるから、イカの味だけが残らないようダイス状にしよう……、だったら水茄子の酸味も同じくらいが良いな、そこに海ぶどうのプチプチっとした食感やミネラル感が入ってくるとおもしろくなるな、といったように、咀嚼というたった何秒かの出来事に何が必要なのかを追求し、パズルのように組み合わせていく作業をしているらしい。
これ、デザートなのです。
ペルー産バナナペースト(ジャガイモかと思った)、トロピカルフルーツ(かろうじてパイナップルだけはわかった)、アマゾンカカオのガナッシュ、インカの塩で作ったサブレ、マカンボナッツ(ポップコーンかと思った)、キヌア、枝豆(ブロッコリーだと思った)、枝豆のピューレを入れて焼いたシフォン(ロマネスコだと思った)を四角にして、グリーンコーヒーの乾燥豆を挽いてパラパラと振りかけています。
これだけ多彩な味をペルーというエスプリでひとつにまとめあげるシェフの感覚が、他に類をみないのです。
もうひとつは「アマゾンカカオ」の独特な酸味を活かすために、乳脂肪や卵をほぼ使わずカカオと水をベースにしたアイス。カカオニブの香ばしさとほろ苦さを添えています。アイスクリームでもジェラートでもソルベでもない、この瑞々しさたるや!
何が入っているかわからなかったよ〜と言うと、「良いんです、ジャングルって何があるかわからないでしょ? 危ないこともあったりしてそれが楽しいんですよね? 僕が伝えたいのはペルーだ!ってことですから、ペルーの食材ってことをわかってもらえれば」と。
どの皿も芸術的。季節の風景を切り取って1皿ごと表現することもあれば、その日のコースを雪解けから始まって春を満喫し初夏を予感させるところで終わる、といったひとつの物語のように構成することもあります。
料理の説明はまるで目次を読んでもらっている感じで、す〜っとその物語の世界に自分が入っていってしまいます。まるで“不思議の国のアリス”です。ストーリーテラーである大土橋さんの声がまた優しくて穏やかで聴き入っちゃうのです。
それで出てくる料理がこれでしょ? どんだけアガることか。