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小池克臣「No Meat,No Life.を生きる男の肉だらけの日々 肉バカ日誌」
年間200食もの牛肉を食べるという、名実ともに肉バカ、小池克臣が日々蓄えてきた肉への愛、知識、体験……そのすべてを注ぎ込む究極の肉コラムがここに。肉好きはもちろん、そうでなくても知っておくべき肉のあれこれが満載!

グルメサイトを眺めているだけでは辿り着けない噂の名店(焼肉編その1)

スマホの登場から世の中の便利さは加速度的に向上しています。
焼肉を食べたいと思えば、食べ○グをはじめとしたグルメサイトで、場所や予算等の情報を入れれば簡単に行きたいお店の検索ができます。しかしながら世の中にはグルメサイトに掲載されていない、もしくは掲載されていてもまったく目立たないにもかかわらず、とんでもなく旨いお店が存在するのです。
人知れずひっそりと日々常連だけを楽しませるような極上の空間……今回はそんなお店の中から肉バカのとっておきのお店を紹介したいと思います。

あえてただの「R」とさせてください

東京都練馬区、最寄りの地下鉄の駅から徒歩5~7分ほどの場所にその焼肉屋はあります。紹介すると言っておきながら、お店への配慮として、ここではあえてその焼肉屋をRとさせてほしいのです。今回のコラムを最後まで読んで、どうしてもRに行きたくなったら、便利なスマホで一生懸命探してほしい。焼肉愛が人一倍強ければ必ず見つかるはずです。

Rはまず予約の時から普通の焼肉屋とは違います。予約の電話をすると、こちらの希望の日時、時間、人数をちゃんと聞いてくれるのですが、最後に衝撃の一言が付いてきます。

「その日はまだ先で営業するかどうか分からないから、前日にまた電話してほしい」と。

後日分かったのですが、Rのお客さんは何べんも通う近所の常連さんばかりで、皆事前予約なしで当日フラッとお店に来るのが普通なんです。今までお店を支えてきた常連がRの焼肉を食べられなくなるのは不本意なので、今回は店名を伏せています。そして話は戻りますが、希望日の前日に電話すれば店主は翌日営業することを優しく教えてくれました。

Rは住宅街にポツンと佇んでいて、目立つのは入口に吊るされた赤ちょうちんのみ。どの街にもありそうな、いたって普通の焼肉屋にしか見えない。19時の予約にあわせて気合いを入れて15分ほど前にお店に着くと、まだ電気がついておらず、人の気配すらない。
お店の電気がついたのは19時の10分前。ここから店主はテキパキと開店準備を進める。店内に入るとL字型のカウンターのみで、壁はビールを持ったお姉さんとプロレスのポスターだらけ。また、使い込まれた七輪からは一目でその年季がわかるでしょう。

Rの何がそんなに凄いのか!?
それはホルモンの鮮度にあります。BSE(狂牛病)発生以降、牛は屠畜後にBSE検査が必要になりました。このBSE検査で陰性の結果が出ないと、その牛の正肉やホルモンを出荷できないのです。このため、鮮度が命のホルモンであっても焼肉屋が受け取れるのは、最速でも屠畜の翌日というのが焼肉好きの中での定説だったのです。

歴史のある焼肉屋の店主に話を聞くと、「昔はまだ温かいレバがお店に届いたもんだよ」というヨダレの出るようなことを聞くことがありますが、今はまったく状況が違う。しかし、どうやら屠畜数の少ない小さな屠場の中には、屠畜当日に検査を終えたホルモンを受取ることができるものがあるらしい。そしてRはそんな経路でスーパーフレッシュなホルモンを仕入れているのです。

スーパーフレッシュなタン
スーパーフレッシュなタン

最初はやはり牛タンを頼みたい。店主が冷蔵庫から取り出したのは、さっき仕入れたばかりであろうタン。慣れた手つきで黒い皮を包丁で剥いていくと、中からは艶やかなピンクの肉片が姿を現す。七輪に乗せるとパチパチと脂が爆ぜる。その音が恐ろしく食欲を刺激する。焼けたタンはサクサクと絶妙な歯切れと共に上品でしっかりとした甘みを舌に広げ、咀嚼するごとに旨味の存在を教えてくれる。

これがスーパーフレッシュということなのだろうか。一切雑味のないクリアな味わいにうっとりとする。

噛むと旨味が噴き出すハラミ
噛むと旨味が噴き出すハラミ

タン以上に普段食べているものと違うのがハラミ。そもそも野性味溢れる噛み応えがあるのが特徴だが、スーパーフレッシュなハラミは肉の繊維がプリプリしていて、噛み締める奥歯を押し返すような力強さがある。そして噛み切られた肉繊維からは純度の高い旨味が噴き出す。

マストオーダーのコメカミ
マストオーダーのコメカミ

豊富なメニューが並ぶ中でコメカミはマストオーダーと言えます。
レアよりはウェルダンよりの火入れで内部にじっくりと旨味を閉じ込めると、噛む力に比例するかのように豊かな味わいが訪れます。

微塵も臭みを感じないレバー
微塵も臭みを感じないレバー

そしてレバー。これ以上に鮮度が大事な部位があるでしょうか!?
微塵も臭みを感じさせないレバーは、店主の仕込みの素晴らしさもあるが、やはり鮮度によるところが大きいだろう。滑らかな舌触りと舌を這うように広がる甘みに息をするのも忘れてしまいます。

これら以外にも、どの部位を食べても驚くほど食感が際立って、深い味わい。牛以外には豚のホルモンも豊富で、ラムはロースも食べることができます。結局、何を食べても本当に満足のいく美味しさなのです。
このRでメニューを総なめにするくらい食べて再認識したのは、ホルモンにとって鮮度が如何に大事かということ。Rは、今までの肉バカのホルモンに対する概念に新しい1ページを加えてくれた。

真の焼肉好きなら、ぜひ検索しまくって、このRに辿り着いてほしいです。

★焼肉編その2はこちら

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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