2019.2.14
おいしい店は看板いらず! 自由人のシェフが作る料理にワクワク〜小泉料理店〜
みなさんはどうやっておいしいお店を発見しますか?
食の仕事をしている私よりも、一般のグルメさんの方が情報ツウ時代なのを実感してしまったのが、今回ご紹介する「小泉料理店」です。
2018年の10月にオープンしたそうですが、私は最近までまったく知りませんでした。歩いていたらたまたま発見した次第で。
このお店、食べログは3.06(2019年2月13日現在)で、看板もない。みなさん、どうやって知ったのか謎だけど立ち飲みまでいるほどの満席状態。
でも、おいしいわ、居心地が良いわで通いたくなるので、そんな方々が夜毎集まってくるのでしょう。
そういえば前回ご紹介した「BOLT」とタイプが似ているかも。
違うのは様々なジャンルのお料理が出るってことかな。
例えば、この「鴨もつしゅうまいと春菊」です。
そもそも鴨のもつをしゅうまいにしちゃうことも斬新だし、しゅうまいの皮をこんな形状にするのも面白い。それでトドメが春菊をのっけちゃうところ。
思い切って一口でいくと、これがね、見事なハーモニーを奏でるわけですよ。お肉からジュワッとうまみがあふれ、そこに春菊の香りと独特のえぐみが合わさり、トロンとした皮と一体になってお腹に入ると、おいしい〜って言葉が自然と出る。
ここはそんなお料理ばかりなのです。
手書きのメニューには食いしん坊の興味をそそるものがオンパレード。
「今日のオススメは何ですか?」と聞いてみたり、「アテコースにホワイトアスパラを入れて欲しいなぁ」とワガママを言ってみたり、シェフとのやりとりもカウンターの楽しみのひとつ。
何を食べれば良いかと言いますと、満遍なくいろいろ食べたいならメインの違いで3種類ある「アテコース」がオススメです。
8品前後出てくるので、普通の人はお腹いっぱいになるはず。
私はなんだかんだ4-5皿増やしてしまいますが。
「フルコース」はメインにお魚とお肉が付きます。
内容はどれも小泉さん次第ってことで。
アラカルトの場合は2人で3-4品がちょうど良いみたいです。
小泉洋シェフは若い頃は遊びもたくさん経験し、というか遊んでばっかりだったそうで(今の小泉さんからはまったく想像できない)、そろそろ落ち着こうかなと22歳で料理の世界に入り、オーベルジュ、マンションの1室の1日1組限定の正統派フランス料理、ビストロ、中国料理、日本料理に携わり、海外はフランスのブルターニュ、ニース、ボルドー、パリを回ったそうです。
その後はワインにハマり、角打ちビストロへ。
仕事も、薪割りしたり、チーズやシードルを作ったり、豚を飼ったり(笑)と自由奔放。
が、最初に入ったお店はとっても厳しく、着替えは2分以内、トイレは1日3回まで、築地の仕入れに同行しても車には乗れない、当然技術もないのでコテンパンにやられる。
遊び人がよく耐えられたね、と言うと、もともと真面目な性格だし部活も厳しかったので、なんとも思わなかったそう。
“修業”をしたわけではなく、運と要領の良さでここまできたっておっしゃる小泉さんのお料理は、ジャンルレスでボーダーレス。
でもセンスが良くてワクワクするし何よりおいしい。小泉さんがお料理が大好きで楽しいと思っているのが伝わってくるのです。
今まで作ってきたいろいろなジャンルの料理を組み合わせているのが、小泉さんのレシピ。試作もほとんどしたことがないんですって!
食材の産地とか調理法にこだわりはまったくなく、すべて小泉さんの経験値による味のセンスで作られる料理なのです。
ちなみにメニューにあった「コトリヤード」はこんな感じでできあがる。「コトリヤード」とはブルターニュ地方の郷土料理で野菜と魚介の蒸し煮だそうです。
1) 今日は魚がいっぱいあるからコトリヤードを作ろう。
2) まずはブルターニュで教わったレシピに昆布を入れて出汁を作る。
3) 今ある魚や野菜の中からこの出汁に合うものを入れてみる。
4) なるほど、こんな味になったのか。じゃ、味のアクセントにブラックオリーブペーストを添えてみよう。ナンプラーなら香りと風味が面白くなるかな。
5) おいしくできた。よし、メニューに書こう!
これが完成した「コトリヤード」。
もはやブルターニュの郷土料理とは、魚介と野菜を蒸し煮するくらいしか共通点がない。ベースはフランスのビストロ料理だけど、和食と中華料理を組み合わせ、ものすごく魅力的な新しい味わいになっているのです。
有名店で何年も修業したことがないので、偉そうなことは言えないです、って言うけど、だからこそできる“小泉レシピ”にみんながハマっているのです。
連日の大入りがその証拠。
小泉料理店にあるのは“おいしい”と“楽しい”と“居心地が良い”。
近所に見つけちゃったもんね、こんな素敵なお店。
たまにはいつもと違う道を歩くことも必要だわ。