2024.12.27
NASAがついに本気を出した!? 2025年、「地球外生命体」発見への期待がいっそう熱を帯びる!
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
火星に地球外生命体の可能性がある、ということはこちらの記事でも紹介しましたが、NASAが新たに注目しているのは木星と土星の衛星!
2024年10月には木星の衛星に向けて探査機も打ち上げられました。これから注目を集める予感満載の、2つの衛星にまつわるプロジェクトについて紹介します。
第28回「木星と土星の衛星探査」のはなし
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最新探査の目的地は、木星と土星の衛星だった!?
宇宙は広大で神秘的な世界です。そして、その中で「地球外生命体は存在するのか?」という問いは、私たち人類にとって長い間、最もワクワクするテーマの1つとなっています。この連載でも「遠い宇宙の人類のような文明の探査」や「火星での生命の発見への期待」を紹介しました。
生命を探す取り組みはこれだけではありません。NASAはより生命の生存の可能性が高そうな環境の探索に、どんどん乗り出しています。今回はNASAが新たに生命探査を目指している太陽系の環境について紹介します。その舞台は、木星と土星にとっての“月”といえる場所です。
2024年10月に、SpaceXのロケットでNASAのある探査機が打ち上げられました。「エウロパクリッパー」と呼ばれるミッションで、向かう先は木星にとっての“月”、衛星「エウロパ」です。このエウロパは、この連載の1つ前の記事でも紹介した「ガリレオ衛星」の一つ。約400年前に有名なガリレオ・ガリレイによって発見された天体です。
なぜ今、この天体にNASAが探査機を送り込むのでしょうか。
理由はこのエウロパという星において、生命存在の期待がとても高いからです。この天体は厚い氷に覆われています。そして、その下に巨大な液体の海があると考えられています。このことから、生命が生存するために必要なエネルギー源を地下に持っている可能性があるのです。
しかも、生命に必要な酸素を含んだ大気があることもわかっているので、まさに「太陽系で最も生命がいそうな星」の一つと考えられているのです。なんらかの作用によって、地下にある水に酸素が運び込まれることで、氷の下にいる生命の生存を助けているかもしれないわけです。
エウロパクリッパーは生命発見の期待を背負って打ち上げられました。この開発を行なっていたのはNASAのジェット推進研究所という機関です。ここで、客員研究員としてエウロパクリッパーの開発を行なっていたエンジニアに、私のPodcastのヘビーリスナーの田久保勇志さんがいます。
田久保さんによると、「木星周辺は地球周辺に比べて放射線が非常に強く、長期間接近して衛星エウロパを観測することができません。エウロパクリッパーは、木星に近づいては離れてを2年間で40回以上繰り返して、じっくり情報を収集します。実は打ち上げ直前にはエウロパクリッパーの放射線の防御力に欠陥が発見される、というトラブルに見舞われ現場は一時てんやわんやになりましたが、なんとかこれを乗り越えて打ち上げに成功しました。こういったトラブルへの対応力もNASAならではだと思いました。」とのこと。
このミッションでは生命の可能性に近づくという成果ももちろんですが、観測技術上での課題をクリアすることも目標になっているということでした。
宇宙開発の新たな一面を生み出し、未来を切り開くミッション実現のためには、木星に到着するまでに6年、その後2年の観測が待っています。それだけの時間がかかる一大プロジェクトですから、期待して待ちたいですね。
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