2024.9.27
ChatGPTだけじゃない! AIが切り開く宇宙の未来
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
いまや避けて通れないAIテクノロジー。今回はAIが宇宙開発や研究に与えている影響について、解説します!
第22回「AIと宇宙」のはなし
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最近はどこに行っても「AI」の話ばっかり。ChatGPTのような生成AIの登場で注目が集まっています。ビジネス利用に注目が集まる中で、実はAIの利用は宇宙分野でもその流れは強まっています。宇宙とAIの組み合わせ、未来感があるしSF感もあるしでワクワクしませんか?
そこで今回は宇宙開発でのAI利用をテーマにしてみようと思います。私は現役のデータサイエンティストとしてAIを使って仕事をしていて、大学でそういった講義も持っています。
また、NASAで研究していた時にその面白さに気づいて、天文研究でAIを利用してきました。その経験も踏まえて、宇宙分野でのAI利用の最前線とその活用の難しさを整理していきます。
AIと聞いてどんなものを想像しますか?
最近だとチャット形式で対話するものをイメージする人も多いと思いますが、宇宙開発でよく使われるAIの役割はデータの自動処理と分類、そして未来予測が多い印象です。
小難しいことを説明する前に事例があるとわかりやすいですね。
未来予測でおもしろいなと思ったもののひとつが太陽フレアの発生予測です。
たとえば日本のNICT(国立研究開発法人 情報通信研究機構)の取り組みは、太陽表面にある黒点の写真を30万枚使って、そこで発生したフレアと合わせてAIに学習させました。
太陽フレアは黒点で発生するので、その発生現場をAIに学ばせたということです。
これによって構築されたAIは、太陽の表面で見えている黒点での24時間以内の太陽フレアの発生を80%程度の精度で予測できるようになったといいます。
人間の目で判断していた時は30〜50%程度の精度だったということなので、AI登場のインパクトが大きいことが一目瞭然です!
この他にも様々なアプローチが論文で発表されています。
アメリカのNOAA(アメリカ海洋大気庁)のデータを用いて、黒点だけでなくX線や電波で観測した太陽の多角的な面からフレアを予測する研究では、72時間後までを90%超えの精度で予測できたものもあります。
人間の目では判断できない複雑な構造や、処理しきれないデータをカバーしてくれる点でAIは非常に有用で、これによって宇宙への理解は非常に早いスピードで進んでいくことが期待できます。
一方で、実はかなり相性の悪い面もあります。実際に私はその壁に打ちひしがれた苦い経験があります。NASAから日本へ帰ってきてAIを天文研究で利用し始めた時の話です。
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