2024.6.28
宇宙のゴミ問題に立ち向かう! 「アストロスケール」社が目指すサステイナブルな未来
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
今回は、地球だけではなく、宇宙規模でも問題なってきている「ゴミ問題」について。
先日東証グロース市場に上場した日本企業「アストロスケール」について紹介しながら、宇宙の環境問題の現状について解説します。
第16回「宇宙のゴミ問題」はなし
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日本企業「アストロスケール」の技術が注目を集めている!
最近、「宇宙企業」「宇宙ビジネス」という言葉をよく聞くようになったのではないでしょうか?
これまで宇宙開発といえば国が行うものというイメージでしたが、民間の取り組みが増えたことで、宇宙開発に対する距離感が近くなった印象を持っている人も多いかもしれません。
それは気のせいではなく、宇宙開発がビジネスとして成り立ち始めているからこそだと思います。
宇宙企業には以前の連載でも紹介した「SpaceX」などがありますが、日本でもすごい企業が現れています。
特に世界で初めて民間企業による月面着陸にチャレンジした「ispace」と、独自の人工衛星によるサービスを展開する「QPS研究所」、この2つの企業は、宇宙企業として東証グロース市場に上場を果たしたことでその存在感を強めています。
そして6月には、宇宙のゴミ掃除をする「アストロスケール」も東証グロース市場に上場したことが発表されました。今回はこのアストロスケールが目指すサステイナブルな宇宙開発について紹介します。
「宇宙デブリ」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。宇宙デブリとは、簡単にいえば宇宙空間にあるゴミです。このゴミはさまざまで、使い終わったロケットやそのパーツ、寿命を迎えた人工衛星などが含まれます。
宇宙は広大なので、少しゴミが漂っているぐらいは何の問題もなさそうに感じるかもしれませんが、実はかなり重大な問題です。最悪の場合、地球から宇宙に2度と出られない状況になるかもしれません。
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ある宇宙ゴミが1つあるとします。宇宙ゴミの移動速度はなんと時速約3万km(秒速7~8km)と言われていて、ライフル弾より早いです。
これが人工衛星にぶつかると、破片が生まれ、多くのゴミとなります。仮に1回の衝突で100個の破片を生み出したとしましょう。その100個のゴミそれぞれが、さらに他の人工衛星や宇宙機と衝突し、新たに100個のゴミを作り出したとすると、100×100で1万個になります。
あくまでこれは仮の数字の上での計算ですが、宇宙ゴミによる衝突が連鎖的に発生すると、やがて大量の宇宙ゴミが地球周りに溢れてしまうことになるのです。
地球から宇宙へ旅立つ場合には、そのゴミの網目をかいくぐらないといけなくなったり、最悪の場合、地球全体を覆うような形になってしまい、宇宙に2度と出られない状況に陥るリスクも生まれます。
宇宙開発が活発になってきた今だからこそ、その安全性を保つために、宇宙ゴミ問題に対する注目度が上がり始めているわけです。
いつか宇宙ゴミが地球を覆ってしまう未来に立ち向かうべく、宇宙のゴミ掃除をビジネスとしようとしているのが、この度上場をし、世界からも注目をされている日本の宇宙企業「アストロスケール」です。
宇宙企業が注目を浴び始めた頃から最前線にいる企業で、ぼく自身が天文学の研究から、宇宙ビジネスに興味を持ち始めたきっかけとなった会社でもあります。
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