2024.5.10
宇宙人はいる? SF作品に欠かせない地球外生命体を本気で探すプロジェクト「SETI」とは
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
今回は誰しもが一度は考えたことがある、地球外生命体の存在について。SF作品にも頻繁に登場するロマンあふれるテーマを、これまでの科学的な研究実績から紹介します。
第13 回「宇宙人探査」のはなし
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世界中の一般人をも巻き込んで実施した、伝説のプロジェクトがあった
「宇宙の研究をしています――」と話すと、必ずと言って良いほど聞かれる質問があります。
それは、「宇宙人っているの?」です。
何度これを聞かれたかわかりません。今、この記事を読んでいるあなたもきっと一度は考えたことがあると思います。
しかも、この質問は世界中のあらゆる人から聞かれます。それほど人類にとってのロマンなんですよね。
特に私がNASAで研究していた話をすると、火に油を注ぐような感じでその好奇心は燃え上がってしまいます。
この質問にはいろんな回答をしてきました。正直、ちゃんと説明するのが億劫な時もあるので、そういう時は「NASAとの守秘義務で喋れない」と冗談混じりに軽く受け流すんですが、相手が本当に興味がありそうな時によくする話があります。
それは、本気で地球外生命体の探査を目指している天文学者たちがいる、ということです。
この記事を読んでいるあなたも、「本当に知りたい人」だと思うので、今回は地球外生命体を本気で探す研究「SETI」について紹介します。
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SETIとは、Search for Extra Terrestrial Intelligenceの略称で、日本語にすると「地球外知的生命体の探索」です。とても分かりやすいストレートなネーミングですよね。
SETIでの研究は幅が広く、宇宙から飛んでくる地球外文明からのシグナルを取得することや、地球外の生命体へのメッセージ送信など様々なものがあります。
その中でも、特に知られているのは地球外生命体のシグナルの受信実験です。そのために利用されるのは、巨大なパラボラアンテナ。
団地とかマンションのベランダについてる白い丸いお皿のような物体の、もっと大きなサイズです。
このアンテナで宇宙空間の電波を観測することが、この研究の中心になっています。
これは、地球外生命体の文明が通信を行う際に、利用されるであろう方法を本気で検討した『Nature』掲載の論文が元となっており、当時の資料からもかなり真面目に検討されたことが想像できます。
パラボラアンテナによって、地球外文明の通信をキャッチしようとするだけでなく、人類の存在を宇宙に向けて発信する実験も行なっています。
他の惑星や生命体からのシグナルを受信できる星がどこかにあるかもしれないと考え、これまでに発見されている惑星や、生命がいる惑星があるかもしれない恒星にむけて私たち地球人の存在を送信していたりもするのです。
SETIを題材にしたSF作品はいくつもあります。この連載で取り上げた、世界的大ヒット小説をNetflixでドラマ化した『三体』はまさにそのど真ん中。
物語の起点にあったのはまさに巨大な電波望遠鏡です。他にも、ジョディ・フォスター主演の映画『コンタクト』ではSETIが描かれていて、この映画がSETIを世界中に広めたと言っても過言ではありません。
私は、天文の研究に携わる前に映画『コンタクト』を観たのですが、物語に登場するSETI計画を空想のプロジェクトだと思っていました。今、この記事を読んでいる人の中にもそう思っていた人がいるかもしれませんね。
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