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始まりはなんと1892年!「月に水はある?ない?」論争の歴史を知っていますか?

ここで誰もが知るアポロ計画の時代に突入します。1969年から1972年のアポロ計画で人類は月面に到達します。今回は月の水の話がメインなので、その角度でアポロ計画の実績を紐解くと、一言で言えば「不作」でした。アポロ計画で持ち帰られた月のサンプルの中から水の存在を示す証拠は見つかりませんでした。ここでもし証拠が見つかっていたら、月に水がある、ということは常識になっていたかもしれません。実際に月までたどり着いて、サンプルを持ち帰ってきて、その中に水の存在を示す要素がなかったのだから、みんなが「あぁ、月に水はないんだ」と考えるのも当然です。これによってまた月面の水の存在に対して、懐疑的な意見が増えていきます。

アポロ計画での船外活動で月面車(LRV /Lunar Roving Vehicle)を運転するユージン・サー ナン宇宙飛行士  写真提供:NASA
アポロ計画での船外活動で月面車(LRV /Lunar Roving Vehicle)を運転するユージン・サー ナン宇宙飛行士 写真提供:NASA
月面でスコップを使ってサンプルを採取する様子  写真提供:NASA
月面でスコップを使ってサンプルを採取する様子  写真提供:NASA

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再びその流れが変化したのが、1990年代。NASAが行った 「クレメンタイン」と「ルナ・プロスペクター」の2つのミッションの活躍が、世の中に月の水の存在を示しました。
1994年に打ち上げられたクレメンタインミッションでは、人工衛星を月の軌道に投入し、2ヶ月間周回し情報を収集しました。そのデータから、月の南極付近の永久影に水が存在をしている可能性が示唆されました。続くルナ・プロスペクターでも、1998年に北極と南極に水の存在の可能性を示唆する結果が示されました。これにより、世界中で「月に水はある」と考えられるようになります。アポロ計画から20年以上を経て実現したこのレポートで、議論の流れが一気に変わります。ここから今の時代に続く月面の水への期待と活用方法の模索が始まったと言ってもよさそうです。 それだけでなく、人工衛星による月面の探査が活発化していく点でも、ここが大きなターニングポイントの一つと言っても過言ではありません。

水存在の可能性が示されたものの、この時点では観測精度の問題でそれ以上のヒントを得ることができていませんでした。その中で、過去の実験や調査を最新のテクノロジーで見直すことで違う結果が得られるのではないか? そう考えたブラウン大学の研究チームは2008 年にアポロ計画で持ち替えられたサンプルの再調査を行いました。その結果、実は当時のサンプルに水素が含まれていたことを発見しました。現地調達のサンプルからのこの発見によって、月の水の存在に期待が高まり出します。この時、もちろん日本も傍観していたわけではなく、月面の調査を行なっていました。

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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