2020.7.26
やってはいけない!? 「トカゲの尻尾切り」に潜むリスク
再生した尻尾には骨がない!
とはいえ、尻尾が切れてもまた生えてくるんだからいいじゃない、と思う人もいるかもしれません。
子供の頃、「トカゲの尻尾は何度でも生えてくる」と聞いて、無邪気にトカゲを捕まえては尻尾を切ったりした人もいるのでは?
でも実は、尻尾が完全に元の状態に戻ることは二度とないのです。
再生した尻尾には骨がありません。正確には、軟骨に置き換わっています。
我々専門家は、見れば再生尾かそうでないか外見からでも区別がつきますが、そうでなくともレントゲンに撮ればはっきりします。X線写真に軟骨はうつらないからです。
それにせっかく貯めた栄養は失われてしまいますし、再生に余計なエネルギーも要します。
大人になればなるほど、切り離したくはないのです。
ちなみに、ときどきその再生さえしくじって、2本や3本の尻尾になってしまうこともあります。
これからの季節、庭先や公園でトカゲと出会う機会があるかもしれませんが、その際はどうかむやみに「尻尾切り」はしないであげてくださいね。
捕獲の注意と観察のポイント
昨今は、爬虫類ブームもあり、いろんな爬虫類や両生類が乱獲されています。
トカゲを捕まえたとしてもできれば元の場所に戻してあげてください。
トカゲに限らず同じ種類の生きものでも生まれた地域によって違う遺伝子を持っていることがあります。
元と違う場所に放してしまうと、それらの遺伝子が混ざってしまう、遺伝子汚染といった問題が起きるからです。
また、元の場所に戻すにしても、長期飼育してから戻すことや、野外に死体を埋めることも控えていただきたいです。
飼育環境下で、その地域になかった感染症などを持ってしまっている可能性もあるからです。
飼うのであれば最期まで責任を持つ、飼わないのであれば観察後すみやかに元の場所に戻すことが大切です。
なお、その動物にとって合っていない、違う環境に放すことは、場合によっては動物愛護法違反(虐待や遺棄)に抵触する恐れもあります。
夏休みの研究等で飼ってみたい方も、必要最低限の数を飼うようにしましょう。
ちなみに、ニホントカゲの仲間は飼育に紫外線が必要であったり、適切なエサを与えないと栄養失調を起こすなど、爬虫類飼育に慣れていない人には飼育が難しいです。
また、釣りのところでも書きましたが、警戒心が強い個体が多く、飼い始めても隠れて出てこなかったり拒食したりすることもあります。
私は、プロなので、慣らして手乗りトカゲにまでできましたが、それは稀有なことだと思ってください。
よく「爬虫類は人に慣れますか?」と質問されますが、撫でるなどスキンシップをしたいのであればイヌやネコなどを飼った方がいいです。
観察ポイントとしては、捕まえたトカゲの頭をよーく観察してみるとおもしろいです。
左右の眼以外に、頭のてっぺんに眼があります。
実は、ニホントカゲはじめトカゲの多くは、「三つ目がとおる」なのです!
頭頂眼といいますが、明暗を感じることで体温調節など概日リズムに関係しているのではないかといわれています。
人間は2つ目ですが、脳の一部に松果体という器官があって、これが頭頂眼と起源を同じくするものです。
そもそも、脊椎動物の祖先は頭部側面と背面に一対ずつ眼があったようなのです。
側面の一対はそのまま両眼として機能、背面の一対は一つは松果体に、もう一つは頭頂眼(哺乳類では失われている)になったと考えられています。
松果体も、概日リズム・体内時計と関与しています。
進化っておもしろいですね。