2020.11.8
恐いのは、海か幽霊か—”事故物件”対談 松原タニシ氏×鈴木光司氏 <前編>
なぜか人が繋がっていく、 鈴木光司パワースポット説
鈴木 以前、仕事場で寝てたときに、2、3回金縛りになったことがあるんだけど、そういうことはあった?
松原 耳鳴りは結構ありますね。金縛りはほとんどないですけど、事故物件とは関係なしに一回だけあって。中学生のとき、全身にお経を書いているプロレスラーがいたんですけど……。
鈴木 新崎人生。
松原 え! 新崎人生をご存じなんですか?
鈴木 俺が『リング』の映画化を考えているとき、友人のプロダクション社長が観てもらいたい自主映画があるって持ってきたのが中田(秀夫)監督の『女優霊』だったんだよ。それを観て中田監督でいこうと決めたんだけど、プロダクション社長のマブダチが新崎人生。
松原 これは恐ろしい……。この繋がりは恐ろしいですよ、鈴木さん。新崎人生さんの話はたまたま話したことなので……、そこで繋がるとは奇跡すぎます。ちなみに簡潔に言うと、新崎人生さんと同じコスプレをして、家の裏の古墳がある墓園で、使い捨てカメラの“写ルンです”で自分を撮って遊んだ日の晩に金縛りになったっていうだけの話なんですけど、まさか中田監督にも繋がるとは思いませんでした。これはやっぱり鈴木さんの引き寄せの力じゃないですかね。こういうことにも科学で解明されていない何かがあるような気がするんです。
鈴木 繋がったね。俺、崖っぷちに立っている芸人って大好きなんだよ(笑)。だから引き寄せたのかな。心の中ですごく応援してるし、尊敬してる。俺も崖っぷちを歩んできたからね。作家デビューして最初の5年は生活が苦しかった。芸人で食っていくのって難しいでしょ?
松原 全然食えないですね。
鈴木 映画『事故物件 恐い間取り』も観たし、本も読んだけど、そういう苛酷な状況の中で、事故物件に住むことになったわけだよね。
松原 それはもちろんそうです。きっかけは、テレビ番組『北野誠のおまえらは行くな。』(エンタメ~テレ)の企画で事故物件に住むことになりましたが、生きるためにってことがありましたね。
鈴木 苦境の中で、普通の人がやらない道を探し当てたわけでしょ。そういう人間を、俺は評価する。このジャンルのトップを走っているわけだよ。“事故物件住みます芸人”なんて、まったくの新しいジャンルだし。稲川淳二さんを尊敬するのも同じなんだよね。以前から怪談師はいたのかもしれないけど、普通にタレント活動をやっている中で、まったく新しいジャンルを切り開いたんだから、すごいと思う。
松原 いや、ありがとうございます。そのチャンスをくれる人たちがいたというのが大きかったですね。事故物件だったら、先輩芸人の北野誠さんが「事故物件に住んでみいへんか?」と、テレビに出られるチャンスをくれたので、それに乗っかって。本も、二見書房さんが「間取りつきで書いてみませんか?」と声をかけてくれたので、それに乗っかって。発想力がある人に恵まれているというか。
鈴木 いい人間と巡り会えたわけだ。おれもタニシくんも、中田監督に巡り会って、映画の『リング』と『怖い間取り』をヒットさせてもらえた。中田監督は、ハリウッドで『リング2』を監督して、雨漏りのする六畳一間のアパートから、ビバリーヒルズの豪華コンドミニアムに引っ越すことができたんだから……。出世した間取りナンバー1!
松原 前に「鈴木光司パワースポット説」っていう記事を読んだときぞっとしたんですけど、まさに今証明されている気がします。
最初にひと言質問を投げかけただけで、進行はほとんど司会要らず(笑)、すっかり話に花が咲いたおふたり。不思議な縁も重なって、まだまだ会話は止まりません。これも何かの引き合わせでしょうか。
次回は、「ヤドカリ光司と松原タニシ」の新コンビが登場⁉ 後半の配信もお楽しみに。
☆☆☆
ホラー界に金字塔を打ち立てた鈴木光司さんが、実話をもとに語る海への畏怖と恐怖に彩られた松原タニシさんも慄いたエピソードの数々。
世界を船で渡った男だからこそ知る、海の底知れぬ魅力とそこに秘められた無限の恐怖とは……。
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