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「手すり滑り」はいつ誰が始めた? スケートボードの歴史からスケーターファッション&カルチャーを完全解説

悪ガキが育んだストリートスポーツが五輪競技に

拙著『ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新』から抜粋した“スケーター”の項、いかがだったでしょうか? 

スケートボードは街の悪ガキが育み、伝承してきたストリートスポーツです。
オリンピックでは、競技用にあつらえられた階段の手すりや、すり鉢状の滑走路で大技を決める選手が喝采を浴びました。
でも、ストリートでこれらのトリックが生み出された当時、賞賛したのは限られたスケート仲間だけ。
通行人が行き交う街の階段で、あるいは不法侵入した空き別荘のプールでスケートをする不届き者に、世間の大半の人は白い目を向けました。

各地にスケートパークが整備された今では、人に迷惑をかけずとも技を磨くことができますが、“不良”のレッテルなしでスケボーを楽しめるようになったのはごく最近のこと。
だから、スケートボードがオリンピックの舞台で競われていることについて、今でも若干の違和感を覚えざるをえません。
それにスケボーが本来、金メダルなどというカビ臭い権威を目指すスポーツではないことも明らかです。

でも出場していた選手たちが、気の置けない仲間たちと楽しむようにのびのびと競技をしていたさまは、見ていて痛快でした。
“たゆまぬ努力・不屈の根性・ライバルとの死闘”などという、既存スポーツに見られがちな精神性とかけ離れたところに価値を置く、ストリートスポーツの真打ち。
そんなスケートボードに世間の耳目を集めたことは、今回の奇妙なオリンピックの成果のひとつだったのだと思います。

(2021年8月 佐藤誠二朗)

ストリートファッション&カルチャーがもっと知りたい人は…

佐藤誠二朗さんの『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』は、モッズ、ヒッピー、ノームコアなど、1930年代から現在に至るまでのストリートファッションを網羅した1冊。
ストリートスタイルの奥底に潜む反逆性とトラッド性の関係を探るため、その成り立ち、細かなスタイルの変遷を、多くの事例や画像とともに詳細に解説しています。ファッションスタイルだけでなく、時代背景や音楽などの情報も満載。
近代カルチャー史の必携としてファッションファンのみならず幅広い支持を受け、この度3刷が決定しました!

全31スタイルのイメージイラストは、漫画家の矢沢あいさんによる全点描きおろし。史実に忠実に、流麗なタッチで描かれたストリートの少年たちの姿は圧巻です。

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新刊紹介

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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