よみタイ

【猫沢エミさん×野村真季さん『猫沢家の一族』刊行記念特別対談 】どんなにいびつな家族でも、笑って、許して、生きていく

ミュージシャンでエッセイストの猫沢エミさんが自身の家族にまつわる仰天と爆笑のエピソードを綴った『猫沢家の一族』。「よみタイ」で好評を博した連載をまとめた1冊です。
本書の刊行を記念し、パリから一時帰国した猫沢さんのトークイベントが、11月11日「本屋B&B 」にて開催されました。
聞き手は猫沢作品の愛読者で、プライベートでも親交があるという、テレビ朝日アナウンサーの野村真季さんです。
イベントの一部を、ダイジェストでお届けします。

(構成/よみタイ編集部 撮影/齋藤晴香)
リアルチケットは即完売、オンライン配信でも多くの読者の方が集まってくださいました。
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『猫沢家の一族』をめぐる数々の怪奇現象

野村真季(以下、野村) エミさん。無事に来てくださってよかった! 日本に来られるかどうか……大変だったんですよね。

猫沢エミ(以下、猫沢) そうなんです。私のインスタを見ている方はご存じだと思うのですが、帰国する前に盗難事件に遭って、滞在許可証から何から一切合切盗まれちゃって……。10月12日の夜でした。あと2時間で13日の金曜日になるという。すごくない?

野村 なんですか、その符合は!

猫沢 わからないんですよね。この本を書き始めてから、不審なことがいろいろ起きまして。邪魔されてるのかな、と思ったんですけど、多分これは一族からのプレゼントなんですよ。「これを乗り越えたら、さらに強靭な精神力をゲットできるから、俺たちからのお祝い」っていう感じ。
うちの場合は、普通の家族関係とはだいぶかけ離れていたので、あり得るな、なんて思っていたら、担当編集さんにも不思議なことが起きたんですよね。
本が出来上がった後、関係者に見本を送るための献本リストというのを作るんですけど、担当さんはすでに発送を完了していたのに、もう一度発送を指示するメールが、深夜に担当さんから編集部スタッフに送られたと。もちろん担当さんはそんなメール送っていないんです。文章も、普段の彼女の文体じゃないんですよね。自動でつくメールのヘッダーもついてない。集英社さんのメールシステムはセキュリティが結構厳しいらしいのですが、どうやって送られたのか、調べても原因がわからないと。
それ、多分うちの母なんです。「天国から面白メール、送るから~」っていうのが母の辞世の句だったので、無駄に手伝ったかなって。

野村 お母さま、最高ですね。

猫沢 呪いではなくて、むしろ喜んでいて、「お手伝いしたい」、「私も混ぜて」みたいな感じだったんじゃないですかね。

野村 本の中で、弟さんの家でも位牌が散乱していたみたいなお話がありましたね。

猫沢 連載が終盤に差しかかったタイミングでした。最終回あたりを書いているときにもいろいろあったんですよ。例えば、キッチンに置いてあったグラスがパーンって割れて粉々になったり、触ってもいない風船が割れたり。
あと、単行本用に最後の加筆をしていて、なんか気配がするなって思ったら、耳元で「おまえもなんか晒せ」って父の声が聞こえたので、「はい、わかりました」って。こういうの無視すると、後々大変なんで。自分も、書かなくてもよさそうな恥を一個晒させていただきます、と。それ以降はおとなしくなったんですけど。

身分証明書類を一切合切盗まれるというトラブルを経て、なんとか一時帰国を果たした猫沢エミさん。
身分証明書類を一切合切盗まれるというトラブルを経て、なんとか一時帰国を果たした猫沢エミさん。
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猫沢エミ

ねこざわ・えみ
ミュージシャン、文筆家。2002年に渡仏、07年までパリに住んだのち帰国。07年より10年間、フランス文化に特化したフリーペーパー≪BONZOUR JAPON≫の編集長を務める。超実践型フランス語教室≪にゃんフラ≫主宰。著書に『ねこしき 哀しくてもおなかは空くし、明日はちゃんとやってくる。』『猫と生きる。』『イオビエ』『猫沢家の一族』など。
2022年2月に2匹の猫とともにふたたび渡仏、パリに居を構える。

Instagram:@necozawaemi

野村真季

のむら・まさき
テレビ朝日アナウンサー。神奈川県出身。東京女子大学現代文化学部卒業。1998年テレビ朝日に入社。「ANNニュース」や「有吉クイズ」などを担当。猫沢エミ氏の著書の愛読者で、プライベートでも親交がある。

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